♯04 対外折衝

 

「水瀬秋子か……」

 その日棗恭介はデータベースにアクセスし、Kanonの声明を行った水瀬秋子について調べていた。

「二一世紀の後期に出現した稀代の発明王か。太陽光発電システムの基礎理論の提唱者だったな」

 公には姿を見せず、名前だけが後世にまで語り継がれている存在。それだけにこの人物がKanonを創設したと言うのも、あながち間違いではないのだろう。才能的にも資金的にも充分考えられる事だ。

 しかし、二〇〇年以上もたってから、なぜKanonは動き出したのだろうか。

 水瀬秋子の血縁はそこで途切れており、その子孫の行方すら定かではない。おそらくは二一世紀のデータ管理のずさんさから改竄されているのだろう。そう考えると、Kanonは恐ろしく周到に準備された組織だと言える。

 現在までに行われたKanonの武力介入は、CLANNADの開発した新型モビルスーツのデモンストレーションへの乱入。これによりKanonの所有するガンダムの高性能を誇示し、それと同時にCLANNADが条約で規定されている以上の戦力を軌道エレベーターに配備している事を露見させた。

 次にONEの所有する軌道エレベーターのテロリズムの阻止。これによりKanonは純粋な悪意に対抗する組織である事を示した。

 そして、セイロン島の紛争への武力介入。双方のモビルスーツを破壊する事で、どちらの味方でもない事を示した。

 それ以外にも南アフリカの紛争への介入や、タリビアへの空襲を行うなど、紛争の火種があるところには必ずガンダムが現れた。結果としてアイルランドの武装組織『リアルIRA』が武力による問題解決を放棄するなどの声明を出すにいたる。その意味ではガンダムの武力介入は確実に世界を変えつつあった。

「面白くなってきやがったぜ……」

 変わりはじめた世界に、不敵な微笑を浮かべる恭介であった。

 

『セイロン島におけるKanonの武力介入により、私達は一四八名の尊い命を失ってしまいました』

 地球の衛星軌道上を航行するプトレマイオスの艦内にあるブリーフィングルームでは、ONEの代表となる小坂由紀子の声明をクルー全員で聞いていた。

『紛争根絶を謳いながらKanonが行っている行為は、国家の秩序を乱すテロ行為以外のなにものでもありません。私達ONEは断固とした態度で、彼らのテロ行為に挑んでいく所存です。先ず手始めにKanonの武力介入に対応する特別軍事阻止法を制定し、地上軌道上を問わず私達の領土内に踏み込んだ場合、軍事力を持って彼らに対抗していく事を皆様にお伝えいたします。また、Kanonの暴挙をこれ以上続けさせないために、AIR、CLANNADとの関係を強化していく必要があります』

「嫌われたもんだね」

「当然の反応だろう?」

 その放送を見ておどけた様子の北川に、冷静な様子で応える斉藤。

「あう〜真琴達がした事で、ここの軍備とかも増強されちゃうのかな」

「彼らがそうすると言うのなら、私達は武力介入を続けていくだけです」

 不安げな様子の真琴に、丁度ブリーフィングルームに入ってきた美汐が冷静に応じた。

「戦争の根絶、ですか……」

 自分達のしている事は理解していても、栞の表情は暗い。

「それが、Kanonの本懐です」

 強い決意を秘めた瞳で、美汐はそう言うのだった。

 

 同じころ、経済特区の東京に用意されたセーフハウスで、祐一達もこの声明を聞いていた。

「おはよう、祐一」

「祐一くん、おはよう」

 暖かな湯気が立ち上る朝食が用意されたキッチンに入ってきた祐一に、名雪とあゆがにこやかに朝の挨拶をした。それはまるで、今までもずっとそうだったというような笑顔だ。二人のリアクションがあまりにも普通だったせいか、一瞬祐一は言葉に詰まってしまう。

「ダメだよ、祐一。朝はちゃんとおはようございます、だよ?」

「ああ、おはよう」

 少し戸惑いながらも、祐一は言われたとおりの挨拶を返した。

 テーブルの上のコーヒーカップからは暖かな湯気と同時にまろやか香気がたち上り、トースターからはキツネ色に焦げ目がついたトーストが顔を覗かせている。

「いただきます」

 きちんと三人で手を合わせてから、トーストを頬張る。祐一が半分食べ終わったあたりでも、名雪とあゆは仲良くあむあむ、はぐはぐとジャムを塗ったトーストをゆっくり食べている。その幸せそうな様子を見ていると、不思議と祐一も穏やかな気持ちになれた。

 かつての祐一の心の中にも存在した団欒の風景。だが、それはたった一発の砲撃によって、無残にも失われてしまったのだ。なす術もなく吹き飛ばされる人達、そこに広がるのは阿鼻叫喚の地獄絵図。だからこそ祐一は、こんな何事もない平和な日常を守りたいと考えていた。

「そういえば、聞いた? リアルIRAの休止宣言」

 不意に、名雪がそんな事を口にした。

「あの声明で俺達の活動を評価するところもあるようだが、所詮は一時的なものだろうな。武力介入を恐れて先手を打っただけだ」

「そうだね」

 祐一の言葉に同意するように、あゆは憂鬱そうに口を開いた。

「ボク達がいなくなれば、すぐにでも活動を再開するんじゃないかな? 紛争根絶って、そんなに簡単なものじゃないしね」

「だからね」

 それまでの雰囲気を払拭するかのように、名雪が微笑む。

「休めるときには、しっかり休んでおこうよ。どうせすぐに忙しくなるんだから」

 恒久和平を実現するためのガンダム。そして、それを操るガンダムマイスター達。戦いがないときの彼らの日常は、平和そのものであった。

 

 窓の外からサイレンの音が響き、眼下の風景では盛大に黒煙を上げる火災が発生していた。小規模の爆発が町の各所から同時に起こっている。ついに都市部にまでテロの波が押し寄せてきてしまったのだ。

「また……」

 その風景を見ながら、佐祐理は低くうめくように呟く。

「……佐祐理」

 振り向くとそこには、佐祐理の護衛兼侍女の川澄舞が立っていた。

「保守派が手を組む前に、改革を進めないと……」

 またこうなる、と舞はそう言いたげだ。もっとも、佐祐理自身はその事を誰よりもよく理解しているつもりだ。この国が今まで化石燃料に頼り続けてきたツケが、今になってまわってきたのだ。

「でも、この国を立て直すためには、太陽光発電システムを所有する国家群に援助を求ませんと」

「……だけど、佐祐理」

 佐祐理が王女を務めるアザディスタン王国は中東の国家であるが、軌道エレベーター建設に参加していないため、エネルギーの供給権が得られなかったのである。おまけに国の資源とも言える原油が輸出規制を受けてしまっているのでは、どうにも八方塞なのだ。

 そのため、諸外国に援助を求める必要があるのだが、果たして無償で援助してくれる国家があるかどうか。

 そうした援助を受けるためにこの国の議会は王政を復活させ、日系人である佐祐理を担ぎ出したのだ。元々親日派だった当時の王族との混血であるが、王家の血を引いている事には間違いがないのだから。

 とはいえ、王国を取り巻く状況は優しいとはいえない。このまま国内が乱れ続けていけば、Kanonが介入してくる事は必至だからだ。

 それだけは絶対に避けなくてはいけない。再び爆発が起きる都市に目をやりながら、佐祐理はそう決意を固めるのだった。

 

「どうでした? 中佐。ガンダムと手合わせした感想は。忌憚ない意見を聞かせてほしい」

「はっ、私見ですがあのガンダムという機体に対抗できるモビルスーツは、この世界のどこにも存在しないと思われます」

 セイロン島でガンダムと交戦し、辛くも生き延びた渡辺茂雄中佐は、ONEの統合司令部で氷上シュンと会談していた。

「それほどの性能なのかい?」

「あくまでも私見です」

 自分より遥かに若い青年なれど、一応は上官である。礼を失せぬよう最大限の注意を払って茂雄は口を開く。

「それなら中佐を呼び寄せた甲斐があるというものだよ」

 シュンの様子はどこか楽しげに見える。

「中佐、ガンダムを手に入れよ。AIRやCLANNADよりも先にね」

「はっ!」

「専任の部隊を新設する。人選は中佐に一任するが、一人だけ面倒を見てもらいたい兵がいるんだ」

 シュンが促すと、一人の少年が部屋に入ってきた。

「失礼する。超人機関技術研究所から派遣されてきた、超兵一号の折原浩平少尉だ。人は俺を美男子星のビダンシーと呼ぶ」

「超人機関……?」

 思わず茂雄は呻き声を漏らしてしまう。まさかあの計画がまだ動いていたとは。話を聞くと、この計画は水面下では進行しており、上層部はこの少年を対ガンダムの切り札として考えているらしい。

「本日付で中佐の専任部隊に着任した。よろしくお願いする」

 多少性格に問題があるようだが、計画の都合上仕方がないのだろう。まだ若すぎるようだが、能力的に問題無しと判断されたのだろうか。

 

「バックパックと各部の関節を強化、それから機体の装甲を軽量化して、表面には耐ビームコーティングを施してある。武装はアイリス社が開発した新型のライフルを取り寄せた」

「壮観だな」

 自分専用にカスタマイズされたフラッグの勇姿に、流石に聖はいい仕事をすると往人は感嘆の声をあげる。機体に施された耐ビームコーティングのために、全身真っ黒に近いカラーリングとなってしまったが、むしろその事がカスタムフラッグとしての威容を際立たせていた。

「そのかわりと言っちゃなんやけど、居候。耐Gシステムを稼動させても、全速でターンする時には一二Gもかかるんやで」

「望むところだ、とだけ言っておこう」

 そう言って往人は晴子と不敵に微笑みあった。

「がお、これが往人さんのフラッグなんだ」

「うむぅ、すごいのだ」

 するとそこに二人の少女が入ってきた。

「神尾観鈴少尉、霧島佳乃曹長。国崎往人中尉の要請により、対ガンダム調査隊に着任しました」

「よく来てくれた。歓迎しよう、フラッグファイター」

「聞いたか、裏葉よ。昼のニュースでKanonを世界警察に任命してはどうかと意見が出たぞ」

「妙案ではありますね」

 大統領官邸では、神奈と裏葉が談笑していた。

「国連軍と違って維持費がかかりませんからね」

「人間の多くがすねに傷を持つものであるように、国家もまた然りじゃ。本気でKanonと手を組もうという連中がおるはずもあるまいに」

 その時、急報が入る。それはタリビア共和国が明日、声明を発表するというものだった。

 

「『ヴェーダ』あなたの予測を聞かせて」

 衛星軌道上を周回するプトレマイオスでは、香里がKanonのミッションプランを作成するメインコンピューター、ヴェーダの端末に意見を求めていた。

 モニター上には世界地図が表示され、紛争が起きている場所、及びこれから紛争が起こりうる場所が示される。

「やっぱり、あたしの予報と同じか……」

 それらに対応するプランは一二種類あるが、そのどれを選択してもKanonの立場は危うくなるだけである。わかっていても、やりきれない気持ちでいっぱいになる香里であった。

『香里〜、大変、大変なのよぅっ!』

 するとそこに、真琴から急報が入る。

『たった今、タリビア政府から公式声明が発表されたのよぅっ!』

「やはり、タリビアか……」

 予報通り。小さく呟く香里の表情には、苦渋の色がにじみ出ていた。

『AIRは五〇を超える国家の議会制をとりながらも、実質は太陽エネルギー分配権を持つ翼人の支配下にある。太陽光発電システムは、翼人の思惑だけで運営されるものではないっ!』

 モニター画面の中には、タリビア政府の代表が熱弁をふるう姿が映し出されている。

『我がタリビア共和国はAIRを脱退し、独自のエネルギー所有権を主張する。この主張に反対し、他国からの政治的、軍事的な圧力がかかった場合、我が国は軍事力を持ってこれらに対抗するだろう。我が国は、翼人の支配に断固として反対するっ!』

 この声明に対してAIRは直ちに議会を召集、他の勢力はとりあえず静観を決め込んだ。これはメディアを通じて世界各国に配信され、アザディスタン王国では佐祐理が沈痛な面持ちでそれを聞いていた。

「……タリビアが動いた」

「あの国は昔から反AIR意識の強いところでしたからね。でも、AIRを脱退して一方的にエネルギー権を主張するなんて……」

 次の選挙のための布石なのかもしれないが、それにしても急すぎる。軌道エレベーター周辺国家の情勢悪化は太陽光発電システムの運営に支障をきたす恐れがある。当然、それに対してAIRは軍を派遣し、軍事的干渉に踏み切るだろう。タリビアもそれを予測しているとすれば、答えは一つだ。

 AIRが軍事行動を起こせば、Kanonが介入してくる。タリビアがKanonを利用するつもりなのは明白だ。軌道エレベーターの近くにタリビアがあるので、こうした脅迫じみた行動が取れるのだから、アザディスタン王国にとってはうらやましい限りだ。

 しかし、これに対してKanonがどう対応するのかによって、王国の未来も占えるというもの。国内の問題を解決するエネルギー資源を得るために、Kanonが利用できるのかどうか。

 もっとも、利用されているのがわかっていても、行動を起こさざるをえないだろう。それが、Kanonなのだから。

 そして、香里は決断を下した。

「ミッションを開始します。ガンダムマイスター達に連絡を」

 

 AIRは議会の賛成多数でタリビアに派兵する事を決定した。それを知った祐一達ガンダムマイスターは直ちに発進していく。

『キュリオス、月宮あゆは介入行動に入るよ』

『デュナメス、水瀬名雪は撃ちにいくよ〜』

『エクシア、相沢祐一出る』

 ただ一人、なぜか水中から発進する祐一であった。

『ついにガンダムと御対面だね、往人さん』

『俺もだ、観鈴』

 このカスタムフラッグが、どこまでガンダムに通用するのか。この戦いにおいて見極める事が出来るだろう。そう思うと往人は体の内側からにじみ出てくるような衝動を、抑えきれないような感じがした。

 AIRの艦隊はタリビアの近海に到着、それにあわせて航空部隊がタリビアの主要都市の制空権を確保した。これに対してタリビア軍は三ヶ所の主要都市に地上用のモビルスーツを配置。だが、その大半がAIRから払い下げられた中古のモビルスーツ『リアルド』では、戦力の差は歴然であった。

『ガンダムが現れましたっ!』

 分散したガンダムは、三つの主要都市にそれぞれ向かう。Kanonが軍事介入を行うのは明白であるが、AIRを相手に戦闘をするというのだろうか。

 タリビアに味方すれば、タリビアの強硬姿勢を手助けする事になる。軍事介入せずにAIRの軍事行動を許せば、紛争根絶というKanonの行動理念が瓦解する。

 Kanonがどのように軍事介入を行うのか、各勢力の注目が集まる中、ミッションはスタートした。

 

 突如として天空から飛来したビームにより、タリビア軍のモビルスーツが破壊される。それはまったく予期せぬ攻撃だった。

『なぜだ? 我々はまだなにもしていないぞ……』

 まっすぐタリビア軍に向かってくるガンダムに、タリビア軍のパイロットは驚愕に目を見開いた。

 Kanonの創設者水瀬秋子は、かつて声明でこう言った。戦争を幇助する国も武力介入の対象であると。

『タリビアを紛争幇助国であると断定。目標を駆逐する』

 エクシアのGNソードが、容赦なくリアルドを切り裂いていく。

『キュリオスは、介入行動を開始するよっ!』

 上空で変形したキュリオスは、ビームマシンガンで敵を狙い撃っていく。機動性能の違いからか、それは一方的な戦闘でしかなかった。

『デュナメスは目標を狙い撃ちだよ』

 けろぴーに回避運動を任せ、名雪がロックオントリガーを手にすると同時に、デュナメスの頭部がガンカメラモードに変形する。その正確な射撃は、的確に敵モビルスーツを狙い撃っていく。

『他人を利用して、勝手な事しないでよね』

 ガンダムがタリビアに攻撃を仕掛けたという事実は、直ちに全世界を駆け巡る事となる。それは彼らを利用しようとした国の末路を暗示しているかのようだった。

 事態を重く見たタリビア共和国首脳部は直ちにAIRとのホットラインを開き、脱退の撤回を宣言した。これによりAIRは、タリビア防衛に向けて軍を派兵する事となる。

「AIR軍が動きました。予報どおり、タリビアの防衛行動だと思われます」

「そう……」

 軌道上のプトレマイオスから地上をモニターしていた真琴からの報告に、香里は安堵の息を吐いた。

「ミッションどおり、各ガンダムは撤退を開始。安全圏へと離脱しました」

「茶番ですね」

 栞の報告に美汐が呟いた時、ブリッジに警報が鳴り響いた。

「ちょっとまって、エクシアに接近する機影があるわ。AIRのフラッグみたいだけど」

「どういう事?」

 真琴の隣からモニター画面を覗き込みながら香里が驚きの声を上げる。なにしろこんな事は、香里の予報には入っていないからだ。

「スペックの二倍以上の速度で、エクシアを猛追してるのよ」

 

『あのフラッグは?』

 エクシアのセンサーでも、猛追する機体を確認していた。AIRがタリビアの防衛行動に入ったため、往人が追いかけてきたのだ。

『これで奴と戦える。感謝するぞ、神奈』

 カスタムフラッグの砲撃を、かろうじてかわしていくエクシア。いくらエクシアが強い機体でも、空中戦では少し分が悪い。

『速いっ?』

 エクシアの攻撃も難なくかわされてしまう。やがてシールドに受けた一撃により、エクシアは海中へと没した。

『往人さん、すごいっ!』

『いや、逃げられた』

 追いついてきた観鈴に、往人は少しだけ落胆した様子で応じた。

『カスタムフラッグで対抗してはみたが、水中行動すら可能とはな。汎用性が高すぎるぞ、ガンダム』

 

「まさか、タリビアに攻撃するなんて……」

 事の顛末に、佐祐理は沈痛な面持ちで呟いた。

 しかし、当のタリビアもAIRも、こうなる事は予測済みであったようだ。Kanonの武力介入を受けたタリビアは率先してAIRの支援を要請した。これによってタリビア国内の反AIR感情は沈静化し、AIR主導の政策に移行しやすくなった。おまけに、タリビアの現政権もAIRの支援を受ける事で安泰。他の国々もタリビアの二の舞を避けるためには、露骨な行動をする事はしないだろう。

 

 さて、この一連の事件で一番得をしたのは、果たして誰なのか?

 

「どういう事なんだろう、恭介」

 東京にある私室でニュースを見ていた直枝理樹は、傍らにいた恭介に話しかけた。

「Kanonがタリビア軍を攻撃したって、あの国は戦争もなにもしていないじゃないか」

「ああ、そうだな」

「戦争をやめさせるって言ってるのに戦いを引き起こしてるなんて、そんなのおかしいよ」

「いいか? 理樹」

 優しく諭すような口調で恭介は口を開いた。

「世界は、そんな簡単なものじゃないんだ」

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