第二十一話
「誰だ、お前は?」
「……あなたは確か、教導隊のヴィータ教導官」
ヴィータが出会ったのは年若い少女で、ツーテールにまとめた碧銀のロングヘアと、青と紫の虹彩異色が特徴的だ。相手はヴィータの事を知っている様子だが、ヴィータにはどこで会ったかの記憶がない。
「教導隊? なんだそりゃあ。誰と間違えてんだ?」
おまけに教導隊なんて、ヴィータには全く縁のない部署だ。闇の書事件以後ヴィータは時空管理局に協力しているが、まだ日も浅いので教官資格も取っていない。
「お手合わせする機会には恵まれませんでしたが……。一度、一槍つけていただきたいと思っていました」
「なんだ? お前もシグナムやフェイトの同類か? バトルマニアの相手は、面倒くせーから嫌なんだがな」
「戦闘狂と言われる事、否定はしません。私の願いはただ一つ……天地に覇を成す強さを、この手にする事」
「良くあるマニアの物言いだ。誰かと比べて強い弱いなんてくだらねーぞ」
このあたりは、強さの意味の問題だ。戦闘状況やお互いの相性によって必要とする強さは違うし、個人戦と団体戦では必要とするスキルも違う。どんな状況でも平均的に強いというのが理想的ではあるものの、なんでもできるマルチスキルは単に対応力を挙げて生存率を向上させるものでしかない。そうした能力は結局のところこれといった特徴のない便利ななんでも屋にすぎず、直接的な強さとはあまり関係がない。
一人の人間が出来るのはいつだって一つの事だけなので、なんでもできるよりは自分の得意とする分野に特化した方がいい。結局のところ、その戦法が通用しなければ強いとは言えないのだ。
それに強くないのなら、はじめから危険に近づかなければいい。
「いくらケンカが強くたって、どうにもならねー事の方が多いんだ。大切なのは、大事なものをどう守るかなんじゃねーのか?」
「大切なものを、もう二度と失わないための『最強』です」
これはもうなにを言っても無駄だと、直観的にヴィータはそう思った。
「ベルカ古流カイザーアーツ、ハイディ・E・S・イングヴァルト! 参りますっ!」
「イングヴァルト……?」
それは古代ベルカの王族の名前だ。なんでそんな奴がこんなところにいるんだと疑問に思う間もなく、アインハルトが勢いよく突っ込んでくる。
「ぶち抜けーっ!」
「あああああ〜っ!」
ヴィータの振り回したグラーフアイゼンが、見事なカウンターでアインハルトに炸裂。この時、勝敗は決した。
「私の覇王流が、まるで通らない……?」
「まあ、純格闘型でそんだけ出来りゃあ上出来だろうな。十分強ぇよ」
要は武器の有無の差である。ヴィータの体格は子供並みで手足も短いが、それを補って余りある鉄の伯爵グラーフアイゼンがある。その素手と武器の間合い差が、勝負の決定的な差となったのだ。
特にヴィータの様なタイプは得手不得手がはっきりしているので出来ない事も多いが、一度自分の得意な間合いに入ると堰を切ったように怒涛の猛攻が繰り出されてくる。少なくとも手数と一撃の威力では、アインハルトが敵うはずもなかったのである。
「ですが……勝てません……」
一応アインハルトも武器持ちを相手にするための斬撃対策をしていたが、どうやら格闘技用の技術と戦闘用の技術では大きく異なるようだった。単純にいえばポイントを取りにいくための斬撃と、確実に相手を仕留めるための斬撃の差である。
「私は……強くなりたいんです……。もっと……ずっと……」
その時、アインハルトの体が淡い光に包まれる。どうやらもう時間切れの様だ。
「消えちまったか……。バトルマニアになるにも、事情があるんだろうけどよ」
もう少し事情を知りたいところだが、すでにガラスが割れるように消えてしまったあとではどうしようもない。
「しかし、なんなんだ? 教官とかなんとか言ってたが……」
「あら……?」
その時、丁度その近くを通りかかったアインハルトとヴィヴィオが、少し離れたところでその様子を見ていた。
「あれはやっぱり。ヴィータ教官! もしかして私の偽物が、ヴィータ教官にご迷惑を?」
「で、でももう倒されたみたいですから、今更わたし達が出ても、また誤解を招きます!」
ごめんなさいは後でたくさん伝えればいい。今はとにかく増殖した闇の欠片を討伐するのが先決だ。
「おい! そこの二人! 見えてんぞ! 降りてこいっ!」
「見つかってますっ!」
「逃げましょう! ここは離脱ですっ!」
今はまだ、管理局に捕まるわけにいかない。慌ててヴィータの前から退散する二人であった。
「行っちまった……。なんなんだ、あの二人組は……?」
気にはなるが、今は発生した闇の欠片を倒すのが先決だ。そう考えて、先を急ぐヴィータであった。
「チッ! また欠片か! 人がイライラしてるときに……っ!」
ヴィータの前に立ちふさがったのは、意外にもアルフだった。
実は、ここに来るまでの途中でリーゼ姉妹の姿を見かけたヴィータ。お互いに思うところもあるし、一文の得にもならない闘いをしたところで腹が減るだけなので触れ合わずに来たが、彼女達がはやてにした事を考えるととてもじゃないが冷静な気分でもいられない。
そんなわけでかなり虫の居所が悪いヴィータであった。
「また欠片かい……。こっちはフェイトとはぐれて困ってるってのに!」
一方のアルフもかなり焦っていた。
突然急増した闇の欠片の対処に没頭しているうちに、気がつくとフェイトと離れ離れになってしまっていたのだ。念話の届く距離にはいないようだし、フェイトなら大丈夫だと思うが今回の闇の欠片はなにかが違う。そもそもこのヴィータが本物なのか偽物なのかの区別もつかないのだ。
「うおらぁあああっ! ブッ飛べぇーっ!」
「でえりゃあああっ!」
そんな事を考えている余裕もなく、鉄鎚の騎士ヴィータが襲いかかってくる。こうしてなし崩し的にバトルがはじまった。
「痛ぇな! ガンガン殴りやがって!」
「そ、そっちこそっ!」
「て、いうか、今気付いたが……。お前、本物の方か」
「そういうあんたも本物だねえ」
道理で手ごわい相手のはずだ。結局のところただの疲れ損で、ただのなぐられ損だった。
「……悪かったよ。ちょいと頭に血が上っててな」
「まあ、あたしも悪かった。お互いにうっかりしてたって事でノーカンにしようよ」
「おう」
「ところで、フェイト知らない? はぐれちゃってさ」
「いや、わからねー。あいつの事だから無事だとは思うけど」
「そうなんだけどさ……プレシアとかリニスの欠片もいるし、ヘンな異世界人はいるしで、心配なんだよ」
そこでアルフはかくかくしかじかと事情を説明する。プレシアとリニスと言えばフェイトの母親と家庭教師で、二人とも闇の書事件のときにはすでに故人となっている。
当然の事ながらこの二人が闇の書に蒐集されるはずがないのだが、今回の一件では闇の欠片として現れている。これまでとは違った事態に、ヴィータはかなり状況が深刻であると思った。
「今回の件は、やっぱり妙な事が多いな」
「そうなんだよ」
先程ヴィータが会った覇王家の直系と思しき少女と言い、今回の事件はわけのわからない事だらけだ。
「まあ、このあたりの欠片を一掃しているうち、アースラスタッフが大本を割り出してくれるはずだ……。それまでは付近の掃除をやってくしかねえさ」
「だね。んじゃあたしはフェイトを探しに行くから!」
そして、二人はそこでわかれ、お互いの方向へ飛んでいくのだった。
「あら、ユーノくん。こっちに来てたの?」
みんなと離れて闇の欠片の討伐に向かったシャマルであるが、予期せぬユーノとの出会いに思わず微笑みかけてしまった。
「あ、シャマル先生。いや、いつ見てもお美しい。僕は今、ちょっと探し物をしていて……」
「やだ、そんな……」
ユーノの爽やかなスマイルに、シャマルはなぜか頬が紅潮していくのを感じる。
「探し物って、もしかして……」
「大切なものなんです。とても、大切な……」
「そう? わたしにもお手伝いできるといいんだけど……」
ユーノがなにを探しているのか知らないが、クラールヴィントの索敵能力を使えばすぐにでも見つけられるだろう。しかし、いま大事なのは闇の欠片の討伐なので、あまりユーノの相手をしているわけにもいかない。
それに、このユーノが本物である保証はないし、もしかしたら闇の欠片かもしれない。そこでシャマルは確かめてみる事にした。
「あの、ごめんねユーノくん。ちょーっとちくっとするけど、我慢してね?」
「な、なんですか、なんですかー?」
「お願いね」
シャマルの命を受け、クラールヴィントがユーノの背後にゲートを作る。
「捕まえ、た」
そこに手を入れたシャマルが、容赦なくユーノのリンカーコアを掴みだす。
「……これで、おしまい!」
「そんなぁー」
掴まれたリンカーコアより大量の魔力があふれだす。この時、勝負の趨勢は決した。
「ふう。予想はしてたけど、予想以上にやりづらいわね……」
お互いに後衛防御型の魔導師なだけに、かなり不毛な闘いであった。
「ところで、ユーノくんの探し物って一体何なのかしら?」
「それは……」
「なにを探しているのかは知らないけど、きっとうまくいくわ。優しくて強い女の子が、きっとあなたを助けてくれるはずだから」
「そうなんですか、じゃあ……」
その時、ユーノは目にもとまらぬ勢いでシャマルの背後に回り込んだ。
「僕を助けてくださいね。優しくて強い女の子のシャマル先生……」
「ユーノくん、なにを……。はうっ!」
その時、シャマルは信じられないものを見た。ユーノの手が背後からシャマルを貫き、リンカーコアを掴み出していたのである。
(これはわたしの……。どうしてユーノくんがこの技を……)
実は先程の攻撃をわざと受ける事で、ユーノはこの技術を習得したのだった。これによりユーノは、シャマルのリンカーコアから情報を引き出す事が出来る。
「なるほど……こうすればいいのか……」
(まさか、このユーノ君は闇の欠片の……)
気がついた時はもう遅い。シャマルは自分の体が、急速にしびれていくのを薄れゆく意識の中で感じた。
「はっ?」
ふと気がつくと、シャマルは翡翠の結界の中に保護されていた。どうやら意識を失ったシャマルを守るため、闇の欠片のユーノがこの中に入れておいてくれたらしい。どのくらいの間意識を失っていたのかはわからないが、それほど時間はたっていないようだ。
「……どうやら、闇の欠片になってもユーノ君はユーノ君のままみたいね」
闇の欠片とはいえ、このさりげないユーノの優しさ。それにオリジナルにはないワイルドな魅力に、なぜかシャマルは胸が高鳴るのを感じていた。
「さあ、他の子達も助けていってあげなくちゃ!」
こうして心機一転したシャマルは、次の戦いに臨むのだった。
「あら……?」
闇の欠片を探していたシャマルは、長い金髪をサイドでポニーに結んだ少女を見つけた。その少女は紅と翠の虹彩異色が特徴的で、黒系統のバリアジャケットを装着している。
「どうしたのかしらあの子……。なんだか泣いているみたいだけど……」
その少女の姿が十代後半に見えるせいか、かなり異様な光景だった。そこでシャマルは近づいて話しかけてみる事にした。
「こんにちはー。どうしたの? なんで泣いているの?」
「ぐず……ママ……いないの……」
「あら、迷子?」
随分と大きな迷子であった。
「ずっと探しているのに……。ママ、いないの」
「そう……。じゃあお姉さんが一緒に探してあげようか?」
「お姉さん……?」
無邪気な発言だった。しかし、その場の空気を凍りつかせるには十分な一言だった。
「あなたのお名前は? ママはどんな人?」
こめかみの部分がひきつるのを感じながら、努めて冷静な口調でシャマルは語りかける。このあたりは流石の領域であろう。
「知らない人について行っちゃダメだってお城のみんなが……。それに悪意の持ち主はいつも笑顔で近づいてくるって……」
「ああ、まあそうよね……」
先程から少女の一言一言が妙に突き刺さってくる。確かに言っている事に間違いはないのだが、妙にむかむかとしてくるシャマルであった。
(お城って……。まさかこの子が聖王家とか王族のわけないし……)
この少女の持つ虹彩異色は、古代ベルカの王族に頻発する特徴だ。しかし、聖王家の血統はすでに絶えているし、その子孫が生き延びているとは聞いた事がない。
「でもここは危ないから、ちょっと地上に降りようか?」
「や……! こないでーっ!」
「ちょ……ちょっとーっ!」
少女の凄まじいまでの攻撃がシャマルを襲う。素早い動きで手数も多いのだが、決め技以外の攻撃は軽くてかわしやすい。つまり、一見するとシャマルは防戦一方となってしまっているようであるが、実際にはかなりの余裕を持って少女の攻撃をさばいていた。
「あ、暴れないで、怖くないから……!」
「やぁーっ!」
「ていうか、この迷子ちゃん強っ!」
意外なのはこの少女の打たれ強さだ。先程からクラールヴィントで攻撃を仕掛けるシャマルではあるが、なかなか決定打には至らない。泣きながら攻撃してくるいい年をした少女というのはかなりシュールな光景ではあるが、この実力はかなり侮れない。
「うう……ぐずっ……ひっく……」
「ああもう、泣かないで。ママを探すの、手伝うから」
泣く子と地頭には勝てない。ある意味この双方を備える少女に、流石のシャマルも根負けしそうだ。
「でも……だって……あ……ああ?」
やがてこの少女の姿が光に包まれる。そして、少女の姿はガラスが砕けるように消えてしまった。
「あら、消えちゃった……。あの子も欠片だったんだ……」
その時、本物のヴィヴィオとアインハルトがここを通りかかった。
「あああ! 今度は私の偽物がシャマル先生にご迷惑を……!」
「あちらのヴィヴィオさんは、お母様を探されていたようですが」
それはヴィヴィオの持つ過去の記憶。ゆりかごの駆動キーとして利用されていた時の記憶の様だ。改めて見てみると、なんだか妙に恥ずかしい。
「あ……! 今の欠片の本物さん? ちょっと降りてきてもらっていいですかー? お話を伺いたいんですがー!」
「み、見つかっちゃいました!」
「ここは『逃げる』でいいんですよね?」
それはユーノからも厳命されている事だ。今はまだ、管理局に自分達の存在を明かすわけにいかない。
「はい! クリス、ステルス全開! 全速離脱ーっ!」
クラールヴィントの索敵範囲は尋常じゃないくらいに広い。それから逃れるにはステルス機能を最大にして、とにかく全速力で遠ざかるしか方法はない。
「行っちゃった……。なんなのかしら、あの子達……」
気にはなるが、今は闇の欠片を討伐するのが先決である。気を取り直して、次に向かうシャマルであった。
「はーい、ストップー♪ 緑のお姉さんは、そこでストーップ!」
「あら、ピンクのお嬢さん。なにか御用? あなたには今、手配がかかっているんだけど」
最後にシャマルの前に現れたのはキリエだった。とはいえ、お互いにまだ自己紹介もしていないので色で呼び合っている二人であるが。
とはいえ、こうして向こうから姿を現してくれたのは好都合だ。闇の欠片の討伐も大事だが、アミタとキリエの二人を確保するのも重要な任務だからだ。
「それは知ってます。でも、わたしはわたしで、ちょっとあなたに急用があってね?」
「わたしに?」
「マテリアルちゃん達を……王様達を治してあげて欲しいんですよ」
「あら……」
それなら確かにシャマルの得意分野だ。湖の騎士シャマルは戦闘も出来るが、その本領は仲間達のバックアップにあり、なかでも回復魔法など治癒術のエキスパートである。そのため、周囲の人達からは親しみをこめて『シャマル先生』と呼ばれるのだ。
「システムU‐Dはどこかに行っちゃうし、頼りの王様達もダウンしちゃうしで……。わたしってばもう、どうしていいかと困ってしまって」
「ええと、話の流れはよくわからないけど……。マテリアル達を治すかどうかは、はやてちゃんや司令部の判断を仰がなきゃならないもの。わたしの一存じゃ出来ないわ。それに、治し方だってよくわからないっていうのが正直なところだし」
「ええー? システムU‐Dを管理下に置くには、どうあっても王様の力が必要なんですよねえ。……でないと、わたしがエグザミアを持って帰れないんです」
「エグザミア……?」
聞き慣れない単語にシャマルは眉をひそめる。
「まあ、いいです……。いずれにせよ、こちらの時代、こちらの世界での治癒術士の協力は必要でしたし。ちょっと手荒な方法になりますが……協力していただけますよね?」
「遠回しな遠慮が通じる相手じゃなさそうね……。きっぱりはっきりお断りします」
「ああ……それじゃあ降参するときは、なるべくみっともなく泣いて謝ってくださいね? 運が良ければ、手加減が間に合いますから」
「いーだ。これでも夜天の騎士ですよ? そう簡単にやられたりしません!」
「では行きますよ、桃花舞い散る銃剣撃……おなかいっぱい、ごちそうしますっ!」
「こんなはずじゃ〜っ!」
「これでも夜天の騎士なんですからね」
と、いうわけでこの戦いはシャマル先生の大勝利となった。
「なんで、なんでー? この人治癒術士でしょっ? 治癒術士は戦闘力弱めって、いろんな世界の常識じゃないのっ?」
ちなみに、シャマルの戦闘能力はヴォルケンリッター内でも最弱の部類に入る。特にガチンコの殴り合いでは、はやてと最下位争いをするくらいだろう。しかし、長い年月を騎士として過ごしてきた経験は伊達ではないのだ。
「さて、聞かせてもらおうかしら? あなた達は一体だあれ? 一体どこから来たの? マテリアルちゃん達や砕け得ぬ闇について、いったいなにを知ってるの?」
「えーと……。も、黙秘権を行使します!」
なにしろ下手に正体がばれると、ユーノの将来に影を落とす事になる。なるべくこの時代に干渉せずに目的を達成するのが、時の操手たるキリエの目指すところだ。
「あら。じゃあ弁護官が来るまで、このまま拘束させてもらう事になるかなぁ……。よいしょっ」
「あああーん! いたたたた、いたいいたい、ロープが締まる、締まるーっ!」
容赦ないシャマルのバインドがキリエを拘束する。
「なにが目的で来てるのか知らないけど、無茶な事しないでちゃんと事情を説明してくれれば、無駄な争いも起きないのよ」
それはシャマル自身にもよくわかっている事だった。あのときなのはや管理局をもう少し信用出来ていたなら、あんな無駄な闘いをする事もなかったのだ。今はこうしてみんな仲間になり、管理局に籍を置く身になってはいるものの、それでも一部の局員との間には消せないわだかまりだって残っているのだから。
「それにあなた、お姉さんとケンカしてるらしいけど。それも姉妹間の説明不足とか、コミュニケーション不足が原因だったりしない?」
「よその世界の方に、家庭の事情にまで踏み込まれる覚えはありませーん」
そうキリエが唇を尖らせた次の瞬間、凄まじい震動がシャマルを襲う。
「あっ……わっ……ととっ!」
その時、シャマルのバインドが僅かに緩む。この隙を見逃すキリエではなかった。
「キラリーン! キリエ、チャンス! K.K.C!」
「あーっ! わたしのバインドを!」
一瞬にしてシャマルのバインドから脱し、遥か彼方へ離脱していくキリエ。後を追おうとするシャマルであるが、再び大きな揺れが襲いかかってくる。
「また……! なんなの、この揺れ?」
とにかく、今は逃げたキリエを追うのが先決だ。そこでシャマルはシグナム達と連絡を取り、全員でキリエを追いかける事にした。
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