第三十三話
新たに現れた七つの脅威判定。その中の一つがキリエだと知ったヴィヴィオ達は、迫りくる脅威をくぐりぬけて目標に向かう事にした。
そのヴィヴィオの前に最初の刺客が立ちふさがる。咄嗟に身構えはしたものの、その刺客の姿を見た途端にヴィヴィオの顔が笑顔に彩られる。
「ザフィーラだ! うわー、やっぱり全然変わらない!」
「……? どこかで会ったか?」
ヴィヴィオにとっては懐かしいが、この時代のザフィーラには初対面だ。おまけにこの時代では、まだヴィヴィオは生まれてもいない。しかし、このうっとりとする様なヴィヴィオの視線に、ザフィーラはある事を思いついた。
「まあいい。色々と訊きたい事もある。少し同行してもらう事になるが……。その前に」
ザフィーラは浅黒く日焼けした筋骨隆々たる男の姿から、青い毛並みの狼へと姿を変える。
「さあ、存分にモフモフするがいいっ!」
「あ、はい……」
ヴィヴィオにそんなつもりはなかったが、狼形態のザフィーラは彼女にとっても懐かしかった。機動六課にいたころはいつでも一緒にいて、背中に乗せてもらった事もある。それに少しの間だけだったが、ザフィーラからは護身術程度に格闘技を習った事もある。
身近に男性の姿のなかったヴィヴィオにとって、ザフィーラはある意味で父性を感じさせる存在でもあったのだ。
「それじゃ、失礼します。モフモフ……」
「どうだ?」
「はい、素敵です。モフモフ……」
「そうか……」
懐かしいこのモフモフ感に、ついついヴィヴィオは溺れてしまいそうになる。しかし、ここで足止めを食らっているわけにもいかない。
「あ、あのっ! こんな事をしている場合じゃないんです。それじゃ……失礼しま〜すっ!」
ぴゅ〜っとアクセルダッシュで遠ざかるヴィヴィオの後ろ姿を、ザフィーラはただ呆然と見つめていた。普通ならこのまま光の粒子になって消えてしまうが、なぜかヴィヴィオは消えなかった。
「……変わった子供だったな……。それにあの構えは……守護の拳。なぜこの子がこの技を……?」
守護の拳とは攻撃ではなく、防御を最優先とする構えだ。攻勢防御と言う現在では珍しい防御方法で、攻撃を受けても即座に反撃を可能とするのが最大の特徴である。ザフィーラがもっとも得意とするこの構えを、あの少女は一体どこで習得したのだろうか。疑問には思うものの、なぜか不思議な懐かしさがあった。
(そういえば……あいつにも護身術に教えた事があったな……)
その相手とは、かつて闇の書の意志だったリインフォースである。とはいえ、彼女の場合は単なる護身術にとどまらなかった結果、接近しての格闘戦から距離を取っての広域魔法まで使いこなすオールラウンダーになってしまった。
おまけに守護騎士達のデバイスも使いこなすとなると、もはや向かうところ敵なしである。
(それにしても彼女は……。俺を知っていたような素振りだったが……)
闇の欠片でないのなら、ここで確保しておくべきだったか。とはいえ、彼女とはいずれまた会える。そんな気がするザフィーラであった。
「あ、やっと追いついた!」
アクセルダッシュ中のヴィヴィオは、背後から聞こえる懐かしい声に思わず振り向いた。
(ママだ!)
記録映像でしか見た事無い小さい頃のなのはが、穏やかな微笑みを浮かべている。
「ずっと探してたんだよ。会えてよかった」
この時代に来て小さいユーノに出会った時は驚いたが、こうして小さいなのはに会うのもやはり驚きである。
「迷子さんなんだよね? ちゃんと帰れるように私達が手伝うから……お話、聞かせて?」
その優しい言葉に、小さいころからママはずっとママのままなんだ、と言う事をヴィヴィオは実感した。しかし、今ここで不用意に接触してしまうと、未来にどんな影響を与えてしまうかわからない。
「ね、いい子だから……」
優しく穏やかに言い聞かせるようだが、その割になのははしっかりレイジングハートを握っている。
(やっぱり……。ママはママみたい……)
場合によっては実力行使も辞さないその態度に、ヴィヴィオは内心で嘆息した。
「ごめんなさい! 今はちょっと、お話してる時間がないの。ここは、逃げさせていただきます」
「あ、待って! レイジングハート、お願いっ!」
『Divine Buster!』
ピンク色のごっつうぶっとい砲撃が、逃げるヴィヴィオを掠める。防御しているのに、その上からゴリゴリと削っていくような感覚に、ヴィヴィオの背筋に冷たいものが流れる。
「お話、聞かせて?」
ここはもう、闘って切り抜けるしかない。そう覚悟を決めるヴィヴィオであった。
「高町ヴィヴィオ、頑張りましたっ!」
「ええええ〜っ!」
ただでさえ苦手な近接戦。素早い連続攻撃で畳みかけられてしまうと、流石のなのはも成す術がない。おまけに不用意な攻撃は、的確なカウンターでつぶされてしまう。なんとか離れての砲撃戦に持ち込みたいところだが、相手の鋭い追撃になのははされるがままになってしまったのだ。
「いたた……。格闘家さんなんだねー。凄いねえ!」
「なのは魔……。なのはさんこそ!」
一瞬、言ってはいけない言葉を言いそうになり、慌てて言い直すヴィヴィオ。
「こんな形でだけど、手合わせ出来て嬉しかった! 『なのはさん』! ありがとうございました!」
いかにも格闘家らしい、その礼儀正しい態度になのはは好感を持った。
「はい、こちらこそ……、ってそうじゃなくて! 待って、待って!」
ヴィヴィオのお辞儀に合わせて自分もお辞儀をしたところで、ふとなのはは我に帰る。
「ごめんなさーいっ!」
気がつくと、ヴィヴィオの姿は遠い彼方へ消えていた。
「ユーノ司書長?」
自分に向かってくる人影に、アインハルトは驚きの声を漏らす。
(確かユーノ司書長は、ユーディが闇の欠片で偽物を作って管理局側に配置したと言っていましたね。管理局の人達と行動を共にしているという事は、あのユーノ司書長は偽物?)
ぱっと見た目では全く区別が出来ないため、とにかく油断ができない。
(伺った話では、ヴィヴィオさんのお母様であるなのはさんのお師匠様とか……。だとすれば相当にお強いはず……ここは気を抜けませんね)
「丁度良かった、アインハルト! 実はね……」
「覇王流、お見せしますっ!」
「へ……?」
「覇王っ! 断っ空〜っ拳っ!」
「そんなぁ……!」
アインハルトの一撃が見事に決まり、ユーノの体は大きく弾き飛ばされる。
「え……? あ、あの……ごめんなさい……。大丈夫ですか?」
「い……いきなり、なに……?」
お腹を押さえてゲホゲホと痛がる姿は、どう見ても本物だ。
「本当にごめんなさいっ! てっきり偽物だとばかり……」
やはり、この確認方法には問題があるのではないか。ぺこぺこと頭を下げながら、真面目にそう思うアインハルトであった。
「でも……どうしてユーノ司書長が管理局の人達と一緒に……?」
「ちょっと状況に推移があってね。それで作戦を大幅に変更して管理局と共闘する事になったんだ」
「どういう事ですか?」
「うん。つまりね……」
アインハルトに状況を説明しようとした、丁度その時だった。背後から放たれる妙な殺気に、ユーノは背筋が凍りつくような感じがした。
「あれは……フェイトさん。ヴィヴィオさんのもう一人のお母様……」
「フェイト……?」
それにしては妙な殺気を放っているような。普段の優しくて穏やかなイメージのある彼女には、どうにも似合わない感じだ。
おまけにバルディッシュをハーケンモードにしているせいか、その姿はまるで死神のようだった。
「……ユーノをいじめた……」
ぽそりと呟くような声には、妙な迫力がこもっている。フェイトにしてみれば、ユーノはPT事件の公判の時も、闇の書事件の時も、陰になり日向になり支えてくれた大切な人だ。そのユーノを傷つけるような人は、誰であっても許すつもりはなかった。
「ユーノをいじめる……悪い子……」
「いやいやいや、ちょっと待ってフェイト。少し、落ち着いて……」
「私は落ち着いているよ、ユーノ。冷勢だから……」
微妙に言い回しが異なっているような。とにかく、こんな冷静さを欠いた状態のフェイトを闘わせるわけにはいかない。その闘いの結果、どちらかが余計な怪我でもしかねないような状況だ。
「アインハルトも、ちょっと落ち着いて」
「いえ、ここは……」
闘って切り抜けなくてはいけない状況だ。フェイトの放つ殺気に、アインハルトは直感的にそう思った。
以前フェイトに手合わせをお願いした時は、底のしれない速さに驚嘆したものだ。瞬時に間合いを詰めるヴィヴィオの独特な歩法によるステップインとは異なる、純粋な速度に翻弄されて結局掴まえ切れなかったのである。
「行くよっ! バルディッシュ!」
『……Yes sir』
ユーノは、ここまでやる気のないバルディッシュの声を聞いた事がなかった。いつも簡潔に意思を伝える彼にしては、なんとなく呆れているような感じの声がする。
「危ないから、ユーノは少し下がっててね」
「お願いします」
単純な実力でははるかに勝る二人にこう言われてしまうと、ユーノもその言葉に従わざるを得ない。ここはなるべく邪魔をしないようにして、不測の事態に備えようと思うのだった。
「ハーケンセイバー!」
おおきく振り回したバルディッシュより弧状に形成された魔力刃が放たれ、ブーメランのようにくるくると回転しながらアインハルトに迫る。誘導性能の高い技であるが、万一回避されても大丈夫なように、フェイトは一気に加速してアインハルトに迫る。
「覇王流、旋掌波っ!」
しかし、アインハルトは防御も回避もせず、ただ迫りくる魔力刃を掴んでフェイトに投げ返した。
「……え?」
普段のフェイトなら、この程度の攻撃はあっさり回避できただろう。しかし、冷静さを欠いていたのと、全く予期せぬアインハルトの反撃方法に一瞬反応が遅れた。
「きゃああああっ!」
「フェイト!」
ほとんどカウンター気味に炸裂した魔力刃の威力で、フェイトの体は大きく弾き飛ばされた。それを見ていたユーノは素早くフェイトの元へ飛び、その体を優しく抱きとめる。
「大丈夫かい? フェイト」
「あ……うん……」
まるでお姫様の様に抱きかかえられ、至近距離からのスマイルにフェイトの胸が高鳴った。
「ごめんね……。なんだか迷惑かけちゃって……」
「いいよ。フェイトは僕のために怒ってくれたんだからね。その事に感謝はするけど、迷惑だなんて思わないさ」
ユーノは相変わらず優しいな、と思いつつ、頭に血が上って迂闊な攻撃をしてしまった自分を恥じるフェイト。
「怪我してるね。待ってて、すぐに治してあげるから」
「あ……」
翡翠の魔力光に包まれ、ポカポカと体が温かくなるのと同時にフェイトは傷が癒されていくのを感じる。それと同時に、ユーノの知性的な瞳に見つめられていると、胸の高まりが収まるどころか、さらに激しくなっていく。
(えええ? どうしちゃったの? 私……)
(フェイトの顔、赤いけど大丈夫かな……)
(ええと……私はどうしましょうか……)
妙に良くなった雰囲気の二人の邪魔をするわけにもいかず、アインハルトはそっとその場から離れるのであった。
「いいっ! 八神司令っ!」
よりにもよって、トーマが一番会いたくない相手が行く手に立ちふさがっている。
「あ、また『司令』や。なんなん、それ?」
「あ、いや……」
純真無垢を絵に描いたようなきょとんとした表情で、ぽわぽわとのんびりとした口調で話されると、どうにもおかしな感じだ。
(あああ……。やっぱり八神司令がちっちゃくて可愛いよ。なでなでしたい)
「いやいや、リリィ。いくらちっちゃくて可愛くても、相手は八神司令だ。きっと怖いに決まってるから」
「あー、大体聞こえてるんやけど……」
初対面に近い相手に怖がられてしまうのは、はやてにとっては不本意だ。そもそもトーマがなんでこんなに恐れるのか、まったく理解が出来ない。
「もしかして、わたし達未来で知り合いなんか? 未来のわたしって、トーマくんにはおっかないんか?」
「い! いえっ! そんな事は全然! 全くっ!」
(私もトーマもアイシスも、三人揃って可愛がっていただいています。ハイ!)
まるで和田アキ子を前に怯える若手芸人みたいなトーマ達の態度に、はやてはなんだろうなと思う。
(やっぱり怖がられてる……。未来のわたしはなにをしてるんやろーか……)
急に自分の将来について不安になるはやてであった。
「あの、八神司令のお手を煩わせてもアレなんで、俺らここで……ちょっと失礼しますっ!」
(すみません、失礼しまーす)
「はーい。……ってなんでやねん! 逃がさへんって!」
そそくさとその場を離れようとするトーマ達の前に素早くまわりこむはやて。
「ああ、やっぱりっ! ノリツッコミで止められたっ!」
(銀十字! 非破壊設定全開! エクリプスフルドライヴ!)
決してはやてに逆らわないように、どうにかして逃げ切る。この無謀ともいえる難題に、挑まざるを得ないトーマ。
(そ……そんなに怖がらへんでもええのに……)
もはや悲愴と言う二文字がよく似合うようになったトーマの姿に、少しだけ傷つくはやてであった。
「もう、あかーん!」
(終わった?)
「うん……なんとか」
この場を切り抜けるためとはいえ、容赦なく攻撃をしてしまったのはまずいのではなかろうか。いくら非破壊非殺傷設定であっても、痛みまでがなくなるというわけではないのだ。
「あいたー……」
「ご、ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」
(すみませんでしたーっ!)
「んー、そんなにおびえんでも……。未来のわたしって、そんなにおっかないんかー?」
なんとか勝利をもぎ取ったものの、内心トーマ達は冷や汗ものだ。そもそも彼らの所属する世界でのはやては、所属する部隊の部隊長だ。局員見習いであるトーマ達にしてみれば、まさしく雲の上の存在なのだ。
部隊内ではそれほど上下関係に厳しいというわけではないものの、これまでにはやてが積み上げてきた武勇伝の数々は、恐怖と尊敬の両方で伝えられている。
「未来の事はそんなにお伝え出来ないですが……。あの、可愛がっていただいていると思います」
(ただ、トーマとアイシスがやんちゃなので、八神司令や守護騎士の皆さんには良く怒られるというか……。それで、その……。ね、トーマ)
「ああ、そーゆー感じ? やんちゃするんはあかんなぁ」
実際、トーマ達は自分達が今より少しでも強くなるために、現状で望みうる最高の環境を用意してもらったと思っている。ただ、今よりも少しでも強くなりたいという思いが先走り過ぎて、まわりに迷惑をかけるような事になってしまうのだ。
そして、そういう事態になった時に、まわりの皆さんに率先して頭を下げているのがはやてだったりする。そんなわけでトーマは、司令としても一個人としてもはやてに頭が上がらないのだった。
「ご迷惑をおかけしている自覚はあるんですが……。まあ、その……俺やアイシスにも色々とありまして……」
「そーなんか?」
まだご幼少のみぎりとはいえ、オカンの風格を持つはやてを前にすると余計な事までしゃべってしまいそうだ。
「あっと、すいませんっ! こんな事をしている場合じゃなかった」
(この件の『ごめんなさい』は、また未来で!)
「失礼しまーすっ!」
今度こそはやてに止められないように、全力でその場から離脱するトーマであった。
「見つけた……。おい、そこのっ! そこ動くなっ!」
なんとかはやてを切り抜けてキリエの元へ向かうトーマであったが、そうは問屋がおろさないとばかりに新たなる刺客が立ちふさがった。
「いいっ? ヴィータ師匠っ!」
一難去ってまた一難。今度の相手は、ヴィータであった。
(うわぁ……怒ってる。ヴィータ師匠、怒ってる!)
「師匠? 弟子なんかとった覚えはねーぞ」
以前にも碧銀の髪に虹彩異色の少女に教官と呼ばれたが、ヴィータにはなんの事やらさっぱりだ。
なにしろ、現時点でのヴィータは管理局の事情聴取を受けつつ、現場の出向任務をこなす身だ。とてもじゃないが、弟子など取っている余裕はないし、他人になにかを教えるという立場でもない。
そんなわけでヴィータは、このわけのわからない状況にかなり頭に来ていたのだった。
「あ、いやあの、ええと……」
(そのー……)
トーマ達の時代のヴィータは航空戦技教導隊五番隊副隊長として、後進の育成にあたっている。エンシェント・ベルカの使い手として、主に近接格闘や実戦における有効な防御方法などを教導している。そんなわけでトーマ達は、ほとんど毎日を厳しい訓練で過ごしているのだ。
「物騒な武器ぶら下げて、そんなバリバリタトゥーなんぞ入れやがって。どこの不良少年だまったく!」
「あの、この模様はタトゥーじゃなくて……」
「それに融合騎もだっ! マスターのやんちゃは、融合騎がいさめてナンボだろーがっ!」
(いえ、その……。私は融合騎じゃなく、リアクトプラグで……)
「ゴチャゴチャやかましぃっ! いいから来い! おめーらまとめて保護すんぞっ!」
はっきり言って、怖い。とにかく、怖い。ちっちゃくて可愛いのに、怖い。自分より年下に見える少女が、形の良い眉を散り上げて怒っているのは、ある意味で最も怖い。
(ヴィータ師匠、この頃からこんな感じ?)
(そうなのかも……)
「おら、ボケっとしてんな! さっさと来いっ!」
あまりの迫力に、ついついその言葉に従ってしまいそうになるが、ここで捕まってしまうわけにはいかない。
「すいません、ヴィータ師匠。ここは、切り抜けさせてもらいますっ!」
(銀十字! 非破壊設定全開! エクリプスフルドライヴ!)
「ブッ飛べーっ!」
「ちくしょおおおおおおおっ!」
正体不明、識別不可能の巨大な武器の一撃で、小柄なヴィータの体は容赦なくブッ飛ばされる。
「いってえ……っ! なんだよおまえのその武器! 防御が出来ねー?」
「うわ……。ごめんなさい! ごめんなさい!」
(ヴィータ師匠怖い。全然容赦ないんだもん……)
「ていうか、抵抗すんじゃねーよ! こっちはおめーらを助けに来てんだ! おとなしく同行しろ!」
「す、すみません! 今はちょっと、どうしても!」
(後でちゃんと謝ります! なので今は、ちょっとごめんなさい!)
同行するのはやぶさかではないが、それだと説明が面倒な事になりそうだし、なによりヴィヴィオやアインハルトと一緒にキリエのところに向かわないといけない。
「失礼しまーすっ!」
「おい、待てって!」
挨拶もそこそこに、全力で現場から離脱するトーマであった。
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