第四十七話

 

「それじゃあ、パパ。あんまり飲みすぎないでね。いこ、すずか」

「うん」

 リンディが戻ってきたのをみて、アリサとすずかはこれ幸いとヨッパライの始末を押し付けて挨拶まわりに戻る。

「あ、アリサちゃん見て。あそこになのはちゃん達が向こうに」

「ほんとだ」

 似たような容姿の二人に左右からはさまれて、状況的にはうらやましいぞとか爆発しろとでも言うべきところなのだが、憔悴しきったようなユーノを見ているとどうにもお気の毒にとしか言いようがない。

「ユーノもアルフも変わったフェレットとか犬とか思っていたけど、まさかあの子達まで魔法関連だったなんてね」

「うん、びっくりしたよね」

 子犬から大人の女性に変わったアルフに、フェレットから少年に変わったユーノ。色々と不思議な出来事を体験してはいるものの、魔法については半信半疑だった二人が魔法を信じるきっかけになったのは、間近で見たこの変身だった。

「まあ、喋ったり人間に変身したりするくらいなら、なのはとフェイトの魔法に比べたら、そんなには驚かないんだけど」

「あれれ……? なんだかちょっと違うような……」

 そこですずかは可愛らしく小首を傾げる。

「アルフさんは子犬の方が本当の姿だけど、ユーノ君は人間の方が本当の姿なんだよね……」

「あ……」

 そう考えると、アリサとすずかには色々と思い当たる事がある。

(そういえばあたし……知らなかったとはいえ、温泉旅行であいつの体洗ってあげてるのよね……)

(みんなで行ったプールで水の怪物に水着を脱がされちゃったときも、ユーノくんそこにいたんだよね……)

 ちなみにその時のユーノは二人の裸を見ないように必死で努力をしていたのだが、乙女にそんな理屈が通用するはずもない。図らずもアリサとすずかは、同世代の男の子と裸の付き合いをしてしまったのだ。

「ま……まあ、フェレットの時はフェレットとして、人間の時は人間として接するのがあたし流」

「そうだね。あ、でもユーノ君、またフェレットになってくれないかな。あの撫で心地が忘れられなくて……」

「うん。それは認める」

 そんなこんなでユーノを見ていると、なぜか不思議な胸の高鳴りを感じるアリサとすずかであった。

 

「はい。焼きそば五人前完成です」

「は〜い。いやあ、それにしてもクロノくん。なんでも器用にこなすよね〜。お姉さんはびっくりだよ」

 クロノが焼きそばを作ると言うのでちょっと心配だった美由希だったが、予想以上にクロノの手際が良かったせいか特にする事もなく、ただ黙って見ているしかなかった。

「士官学校ではサバイバルもやりましたからね。これぐらいだったら」

「は〜……そうなんだ……。すごいね〜……」

 焼きそばを作るのとサバイバルとどういう関連があるのかわからないが、一応一通りの訓練はしているらしい。

「士官学校って言うと……なのはもそういうのやるのかな?」

「なのはは、武装隊の方で僕とはコースがすこし違いますが、たぶんやると思いますよ」

「そうなんだ……」

 こうして話をしながらも、焼きそばを作る手は止めない。これが噂のマルチタスクというものだろうか。

「なんていうか……未だに想像できないんだよね。私の中では、なのはってまだ本当に小さい子供だからね」

「僕の中では、はじめて会ったときから腕の良い魔導師でしたから。同じ人物を見ても、見解は異なるものですね」

「まあ、ねえ……」

 美由希にしてみれば、なのはが凄腕の魔導師というのが信じられない。魔法というものに関してもやや理解しがたい部分があるというのに、腕がいいからという理由で危険な事に巻き込まれたりしないか心配でしょうがないのだ。

「あれれ? クロノくんにお姉ちゃん。なんで焼きそば作ってるの?」

「こんにちは」

「良い香りですね」

「見つかったか……」

 丁度そこへ、なのはとシュテルに両側を挟まれたユーノが現れた。手際良く焼きそばを作るクロノの姿に、なのはは少々驚いているようだ。

 実はクロノがここで焼きそばを作っているのには理由がある。それは先の砕け得ぬ闇事件で、クロノはアースラの艦長任務の訓練航海の途上で事件に途中介入した。その際にクロノは艦の指揮を放り出して事件の陣頭指揮を執っていたのである。

 この訓練航海はリンディもエイミィもいない状態で、クロノが中心となって艦の指揮を執る訓練だった。通常の哨戒任務をこなすだけという簡単なものだったが、万一の事態に対応するためにヴォルケンリッターを同行させていたのだ。これならば、万一の事態にもクロノが現場に出る事無く、問題の解決も出来るはずだった。

 確かに砕け得ぬ闇事件の規模からすると、ヴォルケンリッターのみならずなのは達や未来組まで巻き込んだ総力戦にも等しい状態であり、クロノも氷結系魔導師として現場に出る必要があったのだが、だからと言って艦の指揮をおろそかにしていいというわけではない。おまけにクロノは指揮系統の異なるマリーまで、臨時のオペレーターとして現場出向させてしまったのだ。

 結果から言えば、この事件は目立った被害者も犠牲者もでないクリーンな解決をした。しかし、いくら緊急事態だったとはいえ、艦長の訓練を途中で放り出してしまったクロノまで、結果オーライですませていいというわけでもない。

 つまり、ここでクロノが焼きそばを作っているのは、懲罰のそれに近いものなのだ。

「誰かが鉄板セットを持ちこんでてさ。材料もあるし、せっかくだからって焼きそば作ってるんだけど」

「注文を受けたエイミィがふらりとどこかに行ってしまってね。この有り様だ」

「でも、美味しそうだね」

「美味しいよ。もうちょっと待ってたら食べられるからね」

「そう言えば、ユーノ。今日はフェレットもどきの姿じゃないんだな」

「ああ……。あれから一年たっているからね。魔力適合もだいぶ進んでいるから、この姿でいても問題ないんだよ」

 確かに、砕け得ぬ闇事件におけるユーノの活躍は、なのは達と比較してもそう劣るものではない。無限書庫のデータを最大限に活用した問題解決に向けての作戦立案は、管理局内部でも高く評価されている。これまでの無限書庫は情報の墓場として利用価値の低いものとされてきたが、今後はそれも見直される傾向にあるらしい。

 そんなわけで管理局でのユーノの評価がうなぎ登りに上がっているのを見ていると、クロノとしてもついつい憎まれ口の一つも叩きたくなってしまう。

「それにしてもユーノ。フェレットもどきが両手に花とは良い身分だな」

「いや、これは……」

 なのはとシュテルが勝手に、とユーノは言いたいが、それを口に出せる雰囲気ではない。クロノは今のユーノの状態がうらやましいような雰囲気であるが、美由希からすると間に挟まれた少年が気の毒でしょうがない。

 とはいえ、これまでユーノに接するときのなのはの態度がペットを相手にしているような感じだったのが、きちんと一人の少年として相手にしているように感じられるのは大きな進歩であるように思う。これもみんなシュテルちゃんのおかげかなと美由希が思った時だった。

「あの……美由希さん」

「うん、なあに?」

「その……私の事がいや、とかそう言う事はありませんか?」

 先程から美由希の視線が気になったのか、シュテルがおずおずという感じで口を開く。

「あなたの妹に、似た姿で……」

 シュテルのこの容姿は、単になのはの身体データを模倣したものにすぎない。デストラクターとしての能力を得ているとはいえ、もともとマテリアル達は特に決まった姿を持っていないのだ。

「う〜ん、私は特に気にならないかな……」

 そんなシュテルの不安を吹き飛ばすように、美由希は優しく微笑む。

「確かに最初はちょっとびっくりしたけど、なのはそっくりで可愛いし、妹がもう一人出来たって考えれば特に気にならないしね」

「そんなもん……ですか?」

「うん、そんなもん。シュテルちゃんはシュテルちゃんなんだから、仲良くなれて私は嬉しいよ。もちろん私だけじゃなくて、うちのみんなは大体そんな感じだよ」

「そうですか……。ありがとうございます」

 表情の変化に乏しいのではっきりとはわからないが、どうやらシュテルは微笑んでいるらしい。おそらくは、これで肩の荷が下りたという感じだろう。

 はやてを元にしたディアーチェ、フェイトを元にしたレヴィと違い、シュテルはなのはを元としている。基本的に天涯孤独な身の上の二人とは違い、なのはには家族がいるため、その家族にも受け入れてもらえるかどうかシュテルは内心不安だったのだ。

 そんなシュテルの様子にユーノも、良かったね、と微笑みかけようとしたのだが、逆サイドから立ち上る妙な雰囲気に体を硬直させてしまう。

(なんだ? このプレッシャーは……)

(あはは〜……ユーノ君も大変だ)

 シュテルは妙に積極的な様子だし、ユーノの態度からしてもまんざらでもなさそうだ。頑張れなのは、と心の中でエールを送る美由希であった。

「よしっ! 六人前終了っ!」

 水面下で様々なやり取りがある中でクロノが焼きそばを作り終えると、そこにざわざわとした集団が現れた。

「そうそう、管理局特製やきそばがあるんだよ。すっごい美味しいんだから〜」

「それは楽しみだね、ユーリ」

「はい〜」

 にこやかに談笑しながら、エイミィ、ユーリ、レヴィ、アインスの四人がゆっくりと歩いてくる。

「遅いぞエイミィ 今までなにをやってたんだっ!」

「あはは、ごめんね〜。通信主任は色々と大変なのだよ。それにこうしてお客さんを案内してあげてたからね」

「美味しい焼きそばが食べられると聞きました」

 ユーリの瞳にキラキラと星が浮かんでいる。実のところユーリは、ハンバーグと並んで焼きそばが大好きなのだ。

「それじゃあ、交代するよクロノくん」

「あ、じゃあ美由希さんは休憩してください」

「そう? じゃあその辺で軽くなにかつまんでくるね」

 この二人を邪魔するわけにもいかないので、そそくさとその場を退散する美由希(彼氏いない歴=年齢。現在記録更新中)であった。

「よっし、いくよ〜っ! それっ!」

「エイミィ、調味料を少し入れすぎじゃないか?」

「料理は勢いだよっ! ファイヤー!」

「うわ〜っ!」

 突如としてぼわっと上がる火柱に、ユーリとレヴィは拍手喝采だが、そばで見ているアインスは心配でしょうがない。本当にこれで大丈夫なのか、不安になってしまうのだった。

 

「ん〜と……気がつけば孤独や……。うちの子達は、それぞれバラけてるみたいやね」

 まだ移動を車いすに頼っているはやてでは、こうした場で積極的に動くというわけにいかない。とはいえ、みんなもそれぞれにお花見を楽しんでいるようであるし、もうしばらくはこのままでもいいかと思うはやてであった。

「なんだ子鴉。うぬも一人か?」

「そう言う王様かてぼっちやんか」

「違うわっ! 今はたまたま別行動をとっているまでよ」

「そうか〜? まあ、そう言う事にしとこか」

「ぐぬぬ……」

 口ではなんだかんだ言いつつも、心優しいディアーチェの事だ。足が不自由なはやてを心配して、様子を見に来てくれたのだろう。プイとそっぽを向いて頬を赤らめているディアーチェの姿に、相変わらず素直やないな、とはやては思う。

「あ! はやてちゃ〜ん。ごめんなさい、遅くなっちゃった……。あら……?」

 そんなとき、一人の女性が人込みをかき分けてはやて達のところへやってきた。海鳴大学病院ではやての主治医を務める若き医師、石田幸恵はビニールシートに腰をおろしているはやての横で腕組みをしたまま立っているディアーチェを見て、思わずきょろきょろと交互に顔を見てしまった。

「あの……そちらは……?」

「はやての主治医の方ですね? はじめまして、私はディアーチェと申します」

「まあ、これはご丁寧に。石田幸恵です」

 そうして頭を下げあう二人の横で、はやては小刻みに肩を震わせていた。

「……なにがおかしい、子鴉」

「だってな〜、王様の喋り方が……」

「なにを言うか、年上の人には丁寧語というではないか」

 おかしなところで、リニスの教育の成果が表れていた。

「あの……それで……?」

「ああ、ごめんなさい石田先生。この子はおじさんのほうの知り合いなんよ。前から日本に来てみたい、ってゆうてて……」

「そうなの。それで、王様って?」

「地元じゃこの子領主様の子なんよ。それで、ニックネームが王様に……」

(さっきから黙って聞いておれば……。ようもポンポンポンポン口から出まかせを並べられるな)

(しゃあないやん。嘘も方便や)

 今にして思えば、ヴォルケンリッターの面々がはじめてはやての前に姿を現した時も、石田先生にはかなり苦しい言い訳をしていたような気がする。その後にヴォルケンリッターからも事情説明は受けたが、魔法に関する知識に乏しいはやてでは具体的にはわからなかった。

 ただ一つ確かなのは、これまで身寄りが無く、一人きりの生活を送っていたはやてに、自分の主と呼ぶ家族が出来たという事だけだ。

 今回もかなり苦しい説明だったが、なんとか納得してくれたようだ。もっとも、石田にしてみれば、後で興信所に調査を依頼しておいた方がいいかもしれないと考えていた。

 今でこそ信頼しているが、ヴォルケンリッターがはやての元に現れたときも、最初はあまりの胡散臭さに疑惑の視線を向けたものだ。身寄りのないはやてを心配している石田は、治療以外のプライベートでも連絡を取り合っているので、得体のしれない人物に警戒しておくのは当然と言えた。

「それでな〜石田先生。私の方がお姉さんなんよ」

「ええ〜い! 貴様、まだそのような世迷言を申すかっ!」

「なにゆうてんの。私は六月生まれで、王様は十二月生まれやんか」

「ぐぬぬぅ……」

 こうなると、ディアーチェも二の句が継げない。確かにあれを誕生とすればそうなのだが、そもそもマテリアルであるディアーチェ達に正確な生年月日は存在しない。あえて言うなら、製造された年月日が誕生日とも言えるのだが、そんな昔の事など覚えているはずもない。

「……仲いいのね」

「はい〜」

「我は迷惑だがな」

 詳しい事情についてはよくわからないが、はやてもディアーチェに心を許しているようだし、ディアーチェの方も口で言うほどはやてをいやがってはいないようだ。少なくともディアーチェが悪い人物ではなさそうなので、そこは少しだけ安心する石田であった。

「まあ、先生。座って座って、ゆっくりしてってください」

「ああ、ごめんね。少し顔出して、差し入れ持ってくるだけのつもりだったから」

「それは水臭いですね。どうかゆっくりとおくつろぎください」

「う〜ん」

 はやてとディアーチェに熱心に誘われはするものの、夜勤明けの体には少々つらい。さてどうしようかと少し悩んだその時だった。

「あ、石田せんせ〜」

 戦闘の時の仏頂面とは全く違う、ほがらかな笑顔でヴィータが駆け寄ってくる。

「こんにちは。来てくれたの?」

「ええ」

「ヴィータ。石田先生すぐ帰るってゆうてるけど、どないや?」

「ええ〜? ゆっくりしてこうよ」

「うう〜ん……。まあ、大丈夫かな?」

 流石の石田も、ヴィータの無邪気なお願いには弱かった。

「うちの子達もすぐ集まってくると思いますから。ヴィータは石田先生に食べ物や飲み物持ってきてあげて」

「わかった。先生が好きそうなもの持ってくるね。待ってて」

 止める間もなく、ヴィータは食べ物を求めて雑踏の中に消えていく。

「……凄い人数ね。それにすごくいい場所」

「色々とご縁がありまして」

 ここにいる人のほとんどが地球出身ではないと知ったら、一体この人はどんな顔をするだろうか。ふとディアーチェはそんな事を考えてしまう。

(なんか込み入った話があるのだろう? 子鴉。我も席を外したほうが……)

(王様にも聞いて欲しいんよ)

「石田先生」

 はやては真剣な表情で話しはじめた。

「なんや……今こういう事ゆうんもあれですが……。治療中は本当にお世話になりました」

「ああ……。なに? 急に……」

「私は……あんまりいい患者やなかったと思うんですが……」

「まあ、ねえ……」

「それは病気のせいというより、子鴉の性格によるものではないか?」

 詳しい事情は知らないが、はやての病気は闇の書の呪いによるものらしい。だとするなら、魔法文化の無いこの世界での治療は不可能だ。それでも根気よくはやてに付き合った石田は、きっと一角の人物なのだろうとディアーチェは思った。

「そうね。それにはちょっぴり手を焼かされた感じはあったわ」

 あっさり肯定されてしまったので、少々落ち込むはやて。

「でも、神経内科を専門にするようになって、長期の患者ははやてちゃんが初めてだったから色々思い出深いわ」

「私も、身近な大人と言うとおじさんと石田先生くらいでしたから」

「でも、本当に良かったわ」

「病気が治ってってるのがですか?」

「そのおかげで、はやてちゃんが治療に前向きになってくれた事が」

「自分の体……病院じゃ治れへんやろうなって予感は、正直ありました……。治る気……無かったのかもしれません。先生にしたら、随分厄介な患者やったろうなって、最近やたらと思う事しきりで……」

「厄介なんて事はないわ。病気は、症状だけじゃなくて心も傷つけるから……。私もその辺含めてなんとかしてあげなきゃって焦ってたところもあるから、はやてちゃんにしてみれば重荷になっていたんじゃないかと、最近少し反省したのよ」

「なるほど、お互いに少し困っていたところがあったのだからお相子だな。つまり、悪いのはすべて病気だったという事か」

「そやね、流石は王様や」

「そういう事にしておきましょう」

 そうして、お互いのわだかまりを吹き飛ばすように笑いあう。心のつかえがとれたのか、それはなんとも満ち足りたような笑顔だった。

「石田先生。お医者さんとはちゃうけど、私多分先生と似たような仕事をする事になると思います。ええとこはそのままにして、悪いところをなんとかするお仕事です。その時、私みたいな不良患者に辛抱強く付き合ってくれた石田先生の事、きっと思い出します」

「でも、ダメよ。まるで治療がもう終わったようなその物言い。まだ後一、二年は治療とリハビリが続くんだから」

「そうだぞ、子鴉。なにをするにも、まずは体を治してからにせよ」

「あうう〜……。なんや、王様まで……。まるで先生が二人いるみたいや……」

 のんびり屋の姉に、しっかりものの妹。なんとなく石田には、二人の関係がそう見えた。

(それで、子鴉よ。伝えるべき事は伝えたのか?)

(うん。王様もつきあわせてしもてごめんな)

 はやての決意表明は確かに訊いた。そして、ディアーチェも今後ははやての決意をかげながら見守っていこうと心に決めた。

「おまたせ〜」

 そうこうしているうちに、ヴィータがシグナム達と一緒に両手にたくさんの食べ物や飲み物を持って帰ってきた。その中に交じり、ユーリにレヴィ、アインスの姿も見える。

「主はやての主治医の方でございますね。私はリインフォース・アインスと申します。以後、お見知りおきを」

「まあ、ご丁寧に。私は石田幸恵と申します。よろしくお願いしますね」

 アインスという事は、一世か初代という事ね。と、石田は思った。

 古代ベルカの表記発音は、地球におけるドイツ語の表記発音に良く似ている。英語で一世や二世を表現する際には、ザ・ファースト、ザ・セカンドという具合に数字の前に『ザ』という定冠詞が入る。ところが、ドイツ語では定冠詞をつけないので、名前の後に直接数字が入る事となる。

 医療現場のカルテは基本的にドイツ語で書くため、そちらにも堪能な石田であった。

 

 その後の石田を交えた八神家一同+αによるささやかな宴は、酔っぱらったレティが乱入してくるまで続けられたという。

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