第九話 それぞれの想い

 

「指示や命令を守るのは、個人のみならず、集団を守るためのルールです」

 艦長小坂由起子直々の叱責を、名雪とマコトはうなだれたままで聞いていた。最初にエターナルの陣営に加わるときに、命令を守るように言われていたにもかかわらず、命令違反を犯してしまったのだから、どのような処分が下されるか。

「あなた達の勝手な判断があなた達だけではなく、周囲の人達も巻き込んでしまったかもしれなかったという事。それはわかりますね?」

「……はい」

「本来なら厳罰に処するところですが、結果としていくつか得るところがありました。よって、今回のところは不問とします」

「はい?」

「ただし、二度目はありません。いいですね?」

「はい。すみませんでした」

 実のところ、由起子も辛いところだ。名雪とマコトは好意で協力を行っているだけで、管理局の局員というわけではない。局員であれば所定の危険手当を与えて危険任務に就かせるという事も出来るが、相手が民間人ではそういうわけにもいかない。

 おまけに名雪は親友の大事な一人娘だ。もし万が一の事があればどうすればいいのか。

 本来なら、と由起子は言ったが、実際には局員でない名雪に処罰を下す事は出来ない。しかし、あえて厳しくしないといけないのが、由起子としても辛いところだった。

「それで、浩平。今回の事でなにかわかった?」

「それが全く……」

 今回の事件はしばらく前に海鳴市で起きたジュエルシード事件と酷似しているが、細かい部分でまったく別の側面を見せていた。まず、現在に至るまで敵の全貌がつかめない事。敵の協力者となっている少女の身元が不明な事。一応、名雪も美坂香里という相手の名前を告げてはいるのだが、そもそも原住民の少女がどうやって魔法を手に入れたのかすら明らかになっていなかった。

 詳しい現地調査をしようにも、管理外世界の出来事に管理局は原則として関わる事が出来ない。本格的に調査をするためには、意外と複雑な手続きが必要となるのだ。その際に派遣できる人員にも制限があり、基本的に嘱託魔導師か執務官が単独で行動する事となる。

「エターナルが攻撃を受けたっていうから、長森がその魔力波動を逆探知して相手とその居場所を突き止めるところです」

「そう……」

「本局の方にも応援を要請してありますから、一両日中には結果が出るんじゃないですか?」

 これまでの間に全く進展がない。その事実に由起子は諦めにも似た息を吐くのだった。相も変わらずの人手不足には、由起子も頭を悩ませている者の一人だ。一部隊における高ランク魔導師は保有制限があり、基本的にAAAランクの魔導師が一名配属されればいいほうだ。事件が次元災害に発展する危険性も考慮すれば、浩平一人では心もとないというのが由起子の本音である。名雪が秋子の大事な一人娘であるように、由紀子にとっても浩平は姉から預かった大事な甥なのだ。その意味では危険にさらしたくはないが、そうせざるを得ないのが司令官の辛いところであった。

「名雪さん達は帰宅を許可します。事態の進展があり次第協力してもらいますので、それまではゆっくり体を休ませておくように」

「はい」

 

「はあ……」

 家に戻った名雪は、ちょっぴり自己嫌悪に陥っていた。自分としては良かれと思ってした事であっても、それがみんなのためになるという事ではない。それを実感したからであった。

 もしかしたら、自分が香里のためになにかしようというのも、余計なお節介なのかもしれない。どうも一人で考えていると、悪い方へ悪い方へ行ってしまいそうな気がする名雪であった。

 こういうときに祐一がいると色々と相談ができるのに、とは思うが、なぜか今日は朝早くから出掛けたきり帰ってきていないのだそうだ。昨夜も帰ってくるのが遅かったし、名雪はちょっと心配な気持ちになる。

 祐一は明日になったら自分の家に帰ってしまう。その前に一度会って、きちんとお話がしたいと名雪は思っていた。たぶん、祐一は自分の知らない女の子に、別れのプレゼントを渡しているのだろう。そう思った名雪は、自分も祐一になにかを渡そうと考えた。

 祐一がこの町の事を忘れないように。また、この町に来てくれるように。

 とはいえ、なにを渡せばいいのか、名雪には皆目見当がつかなかった。お金のかかるものは、祐一にお金を取られた時点で却下。今から買いに行く事も出来ないし、用意に時間がかかるのも駄目。

 そうなると、なにか手作りのものという事になるが、なにを作ればいいのか名雪にはさっぱりだった。ふと、庭を見ると雪が一杯積もっている。思い返してみると、祐一と一緒に雪で遊んだ記憶がよみがえる。雪合戦にはじまって、かまくらを作って、祐一と二人で家中を雪だるまだらけにしてしまった時は、秋子に怒られてしまったが。

 そんな時名雪は、祐一と一緒に雪うさぎを作った事を思い出した。名雪は下手くそで、なかなか上手には出来なかったが、名雪にとってはこれが一番の冬の思い出である。そこで名雪は、雪うさぎを作って祐一を探しに行く事にした。

 

「……やっと見つけた」

 名雪が祐一を見つけたのは、陽が落ちてからかなり時間が過ぎての事だった。あたりは雪が降り始めており、このままだと夜には吹雪になりそうだったので、その前に祐一を見つけないといけない。

 祐一がどこにいるかわからなかったので、近所の公園や商店街など行きそうなところをまわっているうちに名雪は駅前に出てしまい、時計台のすぐそばにあるベンチに座っているところを見つけたのだ。

 雪の積もったベンチに座り、祐一はただ泣いていた。時折こぼれる涙を手で拭ってはいたが、後から後からこぼれおちる涙は止まる気配を見せない。あたりにはまったく人影はなく、祐一は孤独の中で嗚咽を漏らすばかりだ。

 どうして祐一が泣いているのかもわからない。どうして祐一が一人でいるのかもわからない。そこで名雪は、祐一を照らす街灯が描く輪の中に足を踏み入れた。

「……家に帰っていなかったから……ずっと探していたんだよ……」

 ずっと走って探していたせいか、名雪の声もとぎれとぎれだ。

「祐一に……見せたいものがあったから……」

 名雪の声に反応したのか、祐一は涙に濡れた瞳でじっと名雪の顔を見上げた。

「ずっと……探してたんだよ」

 真っ赤になった手で、名雪は雪うさぎを祐一に見せる。

「ほら……これって、雪うさぎっていうんだよ……」

 泣いている祐一に、微笑みかける名雪。

「わたしが作ったんだよ……。わたし、下手だから時間かかっちゃったけど……一生懸命作ったんだよ」

 それでも祐一はなにも答えない。泣きはらした目で、じっと名雪を見ているだけだ。

「……あのね……祐一……。これ……受け取ってもらえるかな……?」

 それでも名雪は微笑みかけ、手にした雪うさぎを祐一にさし出す。

「明日から、またしばらく会えなくなっちゃうけど……。でも、春になって、夏が来て……秋が訪れて……。また、この町に雪が降りはじめた時……。また、会いに来てくれるよね?」

「…………………………」

「こんなものしか用意できなかったけど……。わたしから、祐一へのプレゼントだよ。……受け取ってもらえるかな……?」

 そう言って名雪は祐一の目の前に雪うさぎを持っていくが、祐一は無言のまま雪うさぎを見つめている。

「わたし……ずっと言えなかったけど……。祐一の事……ずっと……好きだったよ」

 名雪がその言葉を口にした次の瞬間、差し出された雪うさぎは崩れ落ち、無残な姿で地面にたたきつけられた。

「……祐一……?」

 驚愕の表情で、大きく見開かれる名雪の瞳。戸惑いの色を隠せないまま、名雪は祐一の名を呼んだ。

 さっきまで名雪の手の中にあった雪うさぎを地面にたたきつけたのは、まぎれもなく祐一の小さな手だ。

「……祐一……。雪……嫌いなんだね……」

 涙をこらえるようにしてひざまずいた名雪は、崩れた雪の体を、飛び出した木の実の目を、ひしゃげた葉っぱの耳を、さっきまで雪うさぎだったかけらを拾い集める。

「……ごめんね……。わたしが、悪いんだよね……」

 なんとか全てのかけらを拾い集めた名雪だが、もう元の雪うさぎには戻らない。それはまるで、二人の関係を現しているかのようだった。

「ごめんね……祐一……」

 なによりも深い絶望が、祐一を満たしているのがわかる。もはや名雪の声など届いていないかのように。

「……祐一……」

 それでも名雪は、一生懸命祐一に語りかけた。

「……さっきの言葉、どうしてももう一度言いたいから……明日、会ってくれる?」

 涙をこらえながら、名雪は健気に祐一に微笑みかける。

「……ここで、ずっと待ってるから……。帰る前に……少しでいいから……」

「…………………………」

「お願い、祐一……」

 こらえていた涙が、名雪の頬を伝う。

「……ちゃんと、お別れ言いたいから……」

 

 そして、約束の日。一人ぼっちで待つ名雪のもとに、最後まで祐一は姿を見せる事はなかった。

 

 祐一と名雪の雪うさぎ事件が起こった頃、香里は自室で依頼主からの連絡を受けていた。香里にシュトゥルムテュランを託したその人物は、一方的に念話を用いた接触を行ってくるため、当の香里本人も相手について全くわからないのであった。

「……足りない?」

 香里が命がけで集めたジュエルシードは全部で九つ。ところが、相手が言うにはそれでは足りず、最低でもあと六つ必要なのだそうだ。

「だけど……そんなこと言われても……」

 残りのジュエルシードは名雪が持っており、時空管理局というわけのわからない組織まで出てきている。そうなると、これ以上の行動は逆に危険なのではとも思う。

(やりたくないなら、別にいいのよ)

 声の感じから相手が女性である事がわかる。最初は猫なで声で響いてきた声も、なぜか今は背筋に恐怖が走るかのように感じる。

(その場合、あなたの妹さんがかわいそうね……)

「くっ……」

(妹さんの病気、治してあげたくないの?)

 香里の妹は病弱で、家にいるよりも病院にいるほうが長いという生活を送っていた。香里は妹の病気が早く治ればいいと思っている。毎日時間の許す限りお見舞いに行っても、妹はただ一人取り残されてさみしげな表情を見せつつも笑ってさよならを言ってくれる。そんな生活はもう嫌だった。

 妹の病気が治れば、ずっと一緒にいられるし、一緒に色々な事が出来る。だってそれは、妹の病気が治りさえすればいつだって出来る、本当に些細な事ばかりだったから。

 しかし、まだ小学生の香里にはどうする事も出来ない。そもそも医者でもない香里が、妹の病気を治すなんて事は不可能なのだ。

 だからこそ、香里はこの囁きには逆らえない。ジュエルシードはどんな願いでも叶えてくれるという魔法の石。そう言われては、どんな危険が待ち受けているとしても、香里は集めなくてはいけなかった。

「……わかったわよ……」

 念話が途切れると、香里は重く苦しい息を吐いた。窓の外では雪が降りはじめたようで、急速に町の風景を白一色に染め上げていく。重く暗い雲に閉ざされ、その向こうの空は見えなかった。

 

「本当かよ……」

 そして、瑞佳による解析結果の出たエターナルでは、それを見た浩平が低く呻くような声を出した。

「まさか、俺のおふくろが元凶なんてな……」

 エターナルを襲った魔力の波動を登録されているデータと照合した結果、エターナルを襲った攻撃は浩平の母親である事が判明した。その時、浩平の胸中に宿る感情は、怒り、悲しみ、それとも憎しみか。とても言葉では形容できないような感情が、渦を巻いて浩平の体をかけめぐっていた。

 とはいえ、浩平にとってはすでに親子の縁は切れており、いまさら出てこられたところで元通りの関係に戻れない事も知っている。

 なぜなら浩平は、あの日実の親に捨てられたのだから。

「浩平……」

 瑞佳はそれを知るだけに、今の浩平にかける言葉は見つからずにいる。それ以上に難問なのが、この結果をどう由起子に報告するかだ。浩平の母親である彼女は、由起子の姉でもあるからだ。

 子供のころの浩平は幸せの絶頂にあった。厳しいが頼りになる父親。優しく綺麗な母親。可愛い妹に囲まれた四人は仲良しで、いつも笑いが絶えない家族だった。この時の浩平は、この幸せが永遠に続くものだと信じていた。

 それが一変したのが、父親の入院によるものだった。時空管理局の武装局員であった父親に、定期検診でガンが見つかったのだ。それだけならよくある話であり、即座に日程が組まれて切除手術が行われる事になったのだが、彼の体を蝕むガンは医師団の予想をはるかに超える勢いで進行していたのである。

 こういうときに魔法で治せばいいという意見もあるかもしれないが、ミッドチルダにおける魔法はそれほど便利なものではない。一般的な回復魔法とはあくまでも体の傷を治すのが目的なので、病気の治療などには使う事が出来ず、かえって病状を悪化させてしまう場合もある。そもそも回復魔法とは生物が元々持っている自然治癒力を活性化させて傷の治療を行うものである。そのため、重傷で生命力が衰えてしまっている時には使えないし、腕や足などの一部が欠損していた場合は元通りになる事はない。そうした治療を行うには、再生魔術というほとんど使い手もいないような術式が必要となるのだ。

 結局、浩平の父親はもはや手の施しようもないほどガンが進行しており、告知からわずか二ヶ月でこの世から去った。

 家族は三人になってしまったが、それでも浩平達は生きていかなければならなかった。浩平の母親も管理局の局員として復職し、浩平の父親の遺族年金と合わせればなんとか生活できるレベルに落ち着いていた。

 しかし、運命のいたずらは容赦なく浩平を襲う。

 ミッドチルダには魔法を教える魔法学校や将来の管理局員を育てる訓練学校のほかに、魔力を持たない人達が通う普通学校もある。浩平の妹が普通学校に入学して、しばらくたった後の事だった。浩平の妹は突然体調を崩し、長期にわたる入院生活を余儀なくされた。

 まだ幼かった浩平には妹の病気がどういうものかわからず、そればかりか父親の死因すら知らない。浩平は妹がすぐに退院するだろうと思っていたのだが、予想以上に妹の入院は長く続き、その間に一度大きな手術をした。

 その時の医師の説明は幼い浩平には難しくてよくわからなかったが、とにかく妹のおなかが妹のものではなくなってしまったらしいという事だった。どうやら妹も、父親と同じ病気を発症していたらしい。

 それよりも悲しい事は、それまで浩平と同じように妹を心配していた母親が、病院とは違う場所に通うようになってしまったのである。家の中には奇妙な祭壇がおかれ、壁一面にはなにやら怪しげなお札が貼られるようになった。

 管理世界ではいくつか宗教組織も存在しており、聖王教会のような時空管理局に協力的な組織もあれば、裏で非合法な魔道研究を行っている組織もある。どうやら浩平の母親は、そうした裏の組織と関係を持ってしまったらしかったのだ。

 浩平の母親は仕事にもいかずに毎日どこかに出かけ、たまに帰ってくると祭壇に向かってなにやらぶつぶつとお祈りをしている。それによって浩平の家庭はまともな会話すら失ってしまった。幸いにして浩平は自分のマネーカードは持っていたので、一人でご飯を食べて、一人でテレビを見て、一人でお風呂に入って寝るという生活を送るようになる。

 優しかった母親の面影はすでになく、なにやら怖い目つきをした母親が、浩平に向かってなにやらわけのわからない説法をする事もあった。それは浩平の家だけでなく、妹のいる病室でも説法は行われた。その時母親は、なんだかよくわからない変な服着た女性を連れており、妹に向かってわけのわからないお祈りをして帰っていった。

 それからしばらくすると、抗がん剤の治療のせいか妹の頭からはすっかり髪が抜け落ちてしまっていた。このところただでさえ痩せてきており、つぶらな瞳もやけに落ちくぼんでいるように見えるせいか、まるで人間ではない別の生き物を見ているようだった。その頃になると、浩平の母親は家にも病院にも姿を見せなくなっていた。

 そして、浩平の妹は、予定されていた手術が取りやめになった。この事を浩平は、妹の病気がよくなっている証拠だと思った。しかし、実際には全くの逆で、もう妹には手術をする体力が残されていなかったのだ。

 

 浩平の妹の葬儀は、一日中雨が降りしきる日に行われた。そのせいかその日はやたらと静かに感じられた。

 母親はおかしな宗教組織にはまり込んだ挙句に姿をくらませてしまっていたため、葬儀の喪主は母親の妹である由起子が務める事となった。普段は次元航行艦に乗り組んでいる由起子は、この時になってはじめて姉の家庭が崩壊していた事を知る。葬儀に集まった親族一同は、一人残された浩平の処遇を巡って喧々諤々の口論を繰り広げていた。要するに、集まった香典は欲しいが、浩平はいらないという事だ。

 結局、その境遇を見かねた由起子が、浩平を引き取る事となったのだった。

 瑞佳と浩平が出会ったのはこのころで、お互いが七歳のころに転校先の学校で知り合った。

 その頃の浩平は深い悲しみの底に沈み、いつまでも続くと思っていた幸せが一瞬で消え失せてしまった事実に泣き暮らす毎日を送っていた。

 その頃の瑞佳は転校してきたばかりの浩平が、三週間程学校に来ない事を心配していた。そこで浩平の家に行ったのだが、呼び鈴をいくら鳴らしても出てくる気配はない。二階の窓ガラスに人影があるのはわかったので、そこに向かって小石を投げてみる。一応彼女としてはガラスが割れないように気をつけ、軽く当たるようにしていたのだが、これが彼女の予想もつかない結果を生み出す事となったのである。

 勢いよく窓を開けた浩平の眉間に、瑞佳の投げた石が直撃したのだ。

 当然、浩平は思いつく限りの罵声を瑞佳に浴びせかける。それから突然、浩平は不登校をやめた。毎日学校に姿を現しては、瑞佳に対するいじめをはじめたのだ。スカートめくりを超えたパンツ脱がしや、給食ひっくり返し、他の生徒の上履きを山ほど下駄箱に詰め込むなど、思いつく限りの悪行を行ったのである。よくそれだけめちゃくちゃな事をして、瑞佳との関係が崩れていない事が不思議であった。

 そうした浩平の奇行はいつしか学校で知らぬ者はいなくなり、ある意味において男子生徒達の間でカリスマとして扱われるようになる。

 また、この学校では魔法も教えており、もともと素質があったのか浩平は見る見るうちに魔法が上達していった。現在では執務官の資格も取り、こうしてエターナルに乗り組んでいるのだから、運命とはわからないものだ。

 あれから、三年の月日が流れている。あの日蒸発した母親にいまさら出てこられても困るというのは浩平の本音であるし、それが犯罪者として姿を現したのだから恐ろしく複雑な思いだ。

「どうするの? 浩平」

「どうするもこうするも、次元犯罪者を捕獲するのが俺達の仕事だ」

 浩平の声は、努めて冷静だ。

「あいつはエターナルへの攻撃も行っている。それだけでも逮捕するには十分な理由だ」

 時空管理局は警察と裁判所を合わせたような組織構成であるため、本来裁判所に発行してもらう令状を取る手間が省けるのだ。また、執務官は法務に精通したエキスパートでもあるため、現場で迅速な判断が出来るのである。

「とにかく瑞佳、もっと詳しいデータを集めてくれ」

「了解だよ。それで、浩平。あの赤い魔導師の方はどうするの?」

「それは、現状だと水瀬さんに任せるしかないな」

 

 それぞれの想いを乗せて、長い一日が終わりを告げた。

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