エピローグ
この日も、静かに雪が降っていた。
なにも変わることのない日常。繰り返す穏やかな日々。
そんな時、水瀬家の電話が鳴り響いた。
「はい、水瀬です」
『秋子? 久しぶりね』
「あら? 姉さん。本当、久しぶり」
前に会ったのはいつのことだろうか。そういう意味ではこうして声を聞くのは久しぶりであった。
『早速で悪いんだけど……ちょっと頼みたいことがあるのよ。実はね……』
「了承」
『本当? 助かるわ』
「それで、いつから祐一さんはこちらに?」
『そうね……いろいろ手続きとかあるけど。年明けにはそっちに行くわ』
「わかりました。名雪も喜ぶわね」
もうすぐ名雪の誕生日である。そういう意味では最高のプレゼントだ。
この事を名雪に伝えたら、どんな顔をするだろうか。そのことを考えると、自然に笑顔があふれてくる秋子だった。
『それじゃ、詳しいことはまた後でね』
そういって、電話は慌しく切れた。そのなんともいえない姉らしさに、秋子は苦笑して受話器を置いた。
繰り返す日々の日常。変わらない穏やかな日々。
でも、これからはきっと、いつもより楽しい日々が始まる予感。
そのことに秋子は、年甲斐もなく胸をときめかせていた。
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