プロローグ

 

 ここは極北。アスガルドの地。

 風雪吹き荒ぶ北の大地でポラリスの伊吹公子は、この日も海に面した祭壇で、大神オーディンに祈りを捧げていた。

(発売が告知されてから早二年……。こうして日の目を見るときがきました……)

 長かった……。

 本当に長かったと、心の底から思いながら。

(お前がポラリスの公子か……)

 突然公子の脳裏に不気味な声が響く。

「誰ですか?」

(お前が祈りを捧げるオーディンよりも、高次の存在とだけ言っておこう)

「そんなはずは……」

 アスガルドにおいて最も高い地位にあるのが、大神オーディンだ。しかし、この不気味な声はそれ以上の存在だという。公子にしてみれば、そのようなことがあるはずがない。

(公子よ。このアスガルドと地上を二分する勢力である、聖域(サンクチュアリ)の存在は知っていよう。そして、聖域(サンクチュアリ)が今新しく生まれ変わろうとしていることもな)

 闇から響く声に公子は目を見開く。

(ならば今が絶好の機会であろう。この氷に閉ざされた世界から、一挙に日の当たる世界に出て地上を支配してみたいと思わんか? 祐一を倒し、聖域(サンクチュアリ)を叩きつぶしてな)

「私たちは、戦いを好みません」

 謎の声に向かい、毅然(きぜん)とした態度で公子は言う。

(そうか……。この地上において聖域(サンクチュアリ)聖闘士(セイント)に対抗できるのは、アスガルドの戦士のみ……)

「誰なのです。あなたは一体……」

(これ以上話しても無駄なようだな。ポラリスの公子よ、今日からお前はオーディンではなく私の前にひざまずき、私の意のままとなるのだ)

 次の瞬間海が割れ、逆巻く波が公子を飲み込んだ。

「きゃああああああああああっ!」

 

 闇の中、天空を睨む公子。彼女の守護星である北極星ポラリスは、まがまがしい光に包まれていた。

 その左手の薬指には、黄金色の指輪が(あや)しい光を放っている。

「我が宿星ポラリスよ。この公子に、アスガルド伝説の戦士たちを与え、集わせたまえ……」

 公子の呼びかけにより、アスガルドの地に眠る伝説の神闘衣(ゴッドローブ)が目覚めの光を放つ。

「アスガルド随一の戦士、坂上智代よ。お前にはアルファ星ドゥーベの神闘衣(ゴッドローブ)を与える」

 智代の前に、ドラゴンを象った神闘衣(ゴッドローブ)が現れた。

「凍気を超えた灼熱のパン、古河渚よ。お前にはベータ星メラクの神闘衣(ゴッドローブ)を与える」

 渚の前にスレイプニールを象った神闘衣(ゴッドローブ)が現れた。

「永久氷壁をも砕くスパナの使い手、芳野祐介よ。お前にはガンマ星フェクダの神闘衣(ゴッドローブ)を与える」

 祐介の前にミズガルドを象った神闘衣(ゴッドローブ)が現れた。

紫水晶(アメジスト)(あや)しい輝き、春原陽平よ。お前にはデルタ星メグレスの神闘衣(ゴッドローブ)を与える」

 陽平の前に紫水晶(アメジスト)を象った神闘衣(ゴッドローブ)が現れた。

「疲れしものに安らぎを与えるおまじない、宮沢有紀寧よ。お前にはイプシロン星アリオトの神闘衣(ゴッドローブ)を与える」

 有紀寧の前に、フェンリルを象った神闘衣(ゴッドローブ)が現れた。

「必殺のトランプを持つ女、藤林椋よ。お前にはゼータ星ミザルの神闘衣(ゴッドローブ)を与える」

 椋の前にサーベルタイガーを象った神闘衣(ゴッドローブ)が現れた。

「美しき調べは死へと誘う鎮魂歌(レクイエム)、一ノ瀬ことみよ。お前にはエータ星ヴェネトナーシュの神闘衣(ゴッドローブ)を与える」

 ことみの前に、ヴァイオリンを象った神闘衣(ゴッドローブ)が現れた。

 

 悠久の(とき)を超え、今ここに伝説の神闘士(ゴッドウォーリア)が集結した。

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