エピローグ

 

 公子の放つ気高い小宇宙(コスモ)が、倒れた祐一の身体を包み込んでゆく。

 ポセイドンに操られていたとはいえ、公子はことの顛末の一部始終を見ていた。いや、見させられていたのだ、ポセイドンによって。

 聖闘士(セイント)が、神闘士(ゴッドウォーリア)が戦い、傷つけあうその姿を。

 いくら操られていたとはいえ、罪は罪。その罪は償わなくてはならない。

 例え、この生命に代えてもだ。

「オーディンよ、我に力を」

 その祈りに応え、朋也は黙って小宇宙(コスモ)を解放する。

 アスガルドに、奇跡は起きた。

 

 あゆたちが真琴と風子のところにたどり着いたときには、すでに小宇宙(コスモ)も尽き、倒れふす祐一の姿があるばかりだった。

「そんな……祐一くん!」

「祐一!」

「……祐一!」

「祐一さん!」

「相沢くん!」

「祐一〜!」

 あゆが、名雪が、一斉に祐一の名を叫ぶ。公子の祈りが通じ、アスガルドは元に戻りつつある。そして、あゆたちの叫びに応えるように、祐一の小宇宙(コスモ)も輝きを取り戻していく。

 前以上の輝きを放つ小宇宙(コスモ)をまとい、祐一は再び立ち上がった。

「あゆ……みんな……」

 丁度そこに公子が駆けつけてくる。その後ろには、傷つき倒れた神闘士(ゴッドウォーリア)たちの姿もある。

 オーディン、朋也は彼女たちにも奇跡をもたらしたのだ。

「おねぇちゃん!」

 目ざとく見つけ、風子は公子の腕に飛び込んでいく。

 復活した祐一、元に戻った公子、復活した神闘士(ゴッドウォーリア)たち。その姿にあゆたちが涙したのは言うまでも無い。

「祐一さん、あなた方に犯した私の罪、どうかお許しください……」

「公子さん、あなたのほうが俺なんかより厳しい試練を受けたんだ。しかし、その苦しみを忘れないためにも、アスガルドの平和を守ってくれ」

「お約束しましょう。蘇ったオーディン、朋也くんと、神闘士(ゴッドウォーリア)たちと一緒に、必ず……」

 

 そのとき、突如として湧き上がった波が祐一を飲み込んでしまう。激しい荒波はあゆたちにも押し寄せてきた。そして、あゆたちが気づいたときは、祐一の姿はすでにどこにもなかった。

「そんな……ウソでしょ……?」

 あゆはその大きな目を見開いた。

「祐一く〜んっ!」

 叫んだ後、あゆはがっくりと崩れ落ちた。

「ボクたち……どうすればいいの?」

 祐一がいなくなった。その事実は、なによりも重くあゆたちを打ちのめした。

 

「……見つければいいだけだろ?」

「……えっ?」

 朋也の声に誰もが驚き、その顔に注目した。

「祐一へといたる、別の道をな……」

「あ……」

 あゆたちの顔に、希望の色がともる。

「ほら、いくぞ。まずは情報収集だ」

 

 そしてあゆたちは再び登りはじめる。

 長い……長い坂道を……。

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