ウェディングベルは突然に

 

「かんぱ〜い」

 グラスとグラスが当たる澄んだ音が雰囲気の良い店内に響く。このお店は北川くんが行きつけにしているところらしく、しゃれた内装が女の子好みのいい店だわ。

 なんていうか、普段名雪たちと一緒に行くお店とは違った感じがして、あたしは少しだけ場違いな雰囲気を味わっていたけど……。

 流石にこういうお店でいつもみたいにチューハイとかサワーとかは頼みにくかったので、あたしの手元には北川くんが注文してくれた、ブラディなんとかって言う名前のカクテルがある。

「ひさしぶりね、北川くん」

「ああ、美坂もな」

 あたしがこうして北川くんに会うのは本当にひさしぶりだわ。高校時代のあたしたちは、通称『美坂チーム(北川くん命名)』として行動していたけれど、卒業後の進路の関係で別れ別れになってしまっていたから。

 あたしと名雪、それに相沢くんは進学を希望し、三人で同じ大学にしたのだけど、北川くんは家庭の事情、一人暮らしという環境のために進学をあきらめ、就職をすることになった。

 それでもあたしたちは時間を合わせて休みの日にはなるべく一緒に過ごすように心がけもしたけど、やはり学生と社会人は時間の使い方が違うんだろう。自分でも知らない間に、北川くんとは疎遠になってしまっていた。

 あたしが今日こうして北川くんと会っているのは、ちょっとしたイベントがあったから。

 大事な親友の、結婚式のため……。

 

 それは、六月のある日のこと。

「香里〜、わたし変じゃないかな……」

 結婚式場に設けられた控え室で、ウェディングドレスに身を包んだ親友はなんとも不安そうな瞳であたしを見る。なんていうのか、こう瞳をうるうるさせている名雪ってすごく可愛いのよね。あたしが女じゃなかったら、放っとかないんだけど……。

「大丈夫、よく似合っているわよ。名雪は今日の主役なんだから、もっと胸を張りなさい」

「でも〜……」

 ああ、そんな瞳で見ないで名雪。思わず我を忘れてしまいそうになりそうよ。

 それはともかくとして、名雪をこんなに不安にさせる相沢くんに、あたしはちょっとした嫉妬を感じていた。こうなってしまった以上もうどうしようもないけれど、名雪を悲しませるようなことをしたら絶対に許さないから。覚悟しててね相沢くん。

「やっぱり場違いだよ、わたし……」

 この期に及んでなにを言い出すのか、この子は。

「祐一にはわたしなんかより、もっとずっとふさわしい人がいるはずなのに……」

「その相沢くんが選んだのが名雪なんだけどね……」

 結婚式を目前に控えて不安になる気持ちもわからないでもないけれど、今になってそういうことを言うのは選ばれなかった子たちに対して失礼だと思うのよ。だからあたしは少しだけ口調を荒げてしまう。

「いい? 名雪。あなたは相沢くんに選ばれたのよ。大勢いる中からただ一人ね」

 瞳がうるうるしたままの名雪を見ていると決心が薄らいでしまうが、それをぐっとこらえてあたしは話を続ける。こういうときの名雪が一番凶悪だといった相沢くんの言葉が、今のあたしには良くわかった。

「だからって言うわけじゃないけど、もっと自信を持ちなさいよ。多分今の名雪に勝てるような子はいないと思うから」

 親友の欲目というわけではないが、名雪は料理上手だし、家事も万能にこなす。気立てが良くて優しくて、面倒見もいい。スタイルも良くって運動神経も抜群で、天然とでも言うべきか、自然に周囲の人を和ませてもくれる。

 朝が弱いのが少し玉に瑕だけど、それも相沢くんのおかげで最近は克服しつつあるらしい。こうして考えてみると、名雪は女の子としてはほぼ理想に近いのだ。それを選んだ相沢くんの目は確かともいえるわね。

「名雪さ〜ん準備できた〜?」

「あう〜、名雪〜」

 あたしたちがそんなことを話しているとにぎやかな二人、あゆちゃんと真琴ちゃんが控え室に入ってくる。

 すっかり支度の整った名雪を見るなり二人は目を丸くし、言葉を失ってしまっているみたいだけど……。まあ、無理もないわね。

「名雪さん、綺麗……」

「あう〜……」

 普段は化粧っけのかけらもない名雪だけど、このときばかりは気合を入れてお化粧とかもしているし、着ている服も豪華なウェディングドレス。今の名雪はまさしく全ての女の子が憧れる存在を、見事なまでに体現しているわ。かくいうあたしも今の名雪にはちょっとした嫉妬心を抱いていたりするし……。

 もっとも、我が愛する妹と違ってあゆちゃんたちは結婚とかに憧れているところがあるから、こうして綺麗な花嫁さんを目の当たりにすると嫉妬心よりも憧憬の念が強くなってしまうんでしょうね。

「あらあら、にぎやかね」

「お母さん……」

 不意に響いた声のほうを見ると、そこには名雪のお母さん、秋子さんがいつもの様子で立っていた。毎度のことながら思うのだけど、完全に気配を絶って現れるのはどうかしらね。

 そんなことをあたしが考えていると、名雪の瞳から大粒の涙があふれはじめた。

「お母さん……。今までありがとう……」

「いいのよ、名雪」

 そういって秋子さんは名雪の身体を優しく抱きしめた。母一人子一人の生活は、きっとあたしなんかが考えるよりも辛いものだったのかもしれない。あたしにはお父さんやお母さんに妹までそろっているけど、名雪にはお母さんが一人しかいない。

 それでも名雪はずっと笑顔だったし、あたしも名雪の笑顔には助けられていたわ。

 あの冬の日。あたしが妹なんていないって思い込もうとしていたとき、それを知ってか知らずか名雪はあたしを百花屋に誘ってくれた。多少強引であるようにも思ったけれど、あれをきっかけとしてあたしは妹と向き合えるようになった。

 もしあの時名雪が誘ってくれなかったら、今あたしはこうして栞と向き合えていたかどうか。ううん、それ以前に栞に奇跡が起きたかすらもわからないわ。

 あの時手放そうとしてしまった妹を再び掴み取るきっかけ。今にして思えば些細な出来事なのだろうけど、そのきっかけを与えてくれた名雪には心のそこから感謝しているわ。

 でも、秋子さんが事故に遭ったあの日、あの子から笑顔が消えた。親友が悲しんでいるのに、なにもしてあげることのできない無力感があたしを責め続けた。

 そんな名雪を救ったのが、笑顔を取り戻させたのが相沢くんだった。

 あたしが相沢くんの話を聞いたのは、名雪と出会ったばかりのころ。嬉しそうにいとこの男の子のことを話す名雪の表情は、今までにないくらい輝いて見えたわ。そのころからあたしは、ずっとどんな人なんだろうって思ってた。

 そして、高校二年の冬のある日。突然彼は名雪の家に居候することになり、あたしたちのクラスに転入してきた。

 はじめはちょっと怖い人なのかなって思ってたけど、相沢くんが教室に入ってきたときの名雪の笑顔。今までに見せたこともないような笑顔に、やっぱり名雪は相沢くんのことが好きなんだって思ったわ。

 だから、というわけでもないけれど、あたしはこの誰よりも大切な親友に幸せになって欲しいと思っている。それはきっと、秋子さんも同じ気持ちなんでしょうね。

「名雪。せっかくの晴れの日に、主役が泣いたりしたらおかしいわよ?」

「でも……」

「いい? 名雪。あなたの幸せが、私の幸せなの。名雪が幸せになることが、私を幸せにすることになるのよ」

「お母さん……」

 秋子さんはそっと、名雪のつややかな髪を優しく撫でる。これは多分名雪が小さいころからずっと、悲しんでいるときにはそうしていたのね。流れるように自然に、それが一つの存在であるかのように優しく包み込んでいるわ。

「あなたがお嫁に行っちゃうのは寂しいけれど、名雪が幸せならそれでいいのよ。それにまだあゆちゃんも真琴もいるしね、寂しいなんて思ってる暇は無いわ」

 秋子さんの優しい微笑みに、あゆちゃんと真琴ちゃんはそれぞれ『うぐぅ』『あう〜』と真っ赤な顔でうつむいてしまっている。その気持ちもわからないでもないけど、この二人がいつかお嫁に行く日が来るとはあたしにはとても想像がつかない。それは我が愛する妹に関してもそうなんだけど……。

「さあ、名雪。今日の主役が泣いていたらおかしいわ。あなたが泣いていると祐一さんも心配しますからね」

 それじゃいきましょうかと、秋子さんは名雪をつれて出て行く。本来花嫁をエスコートしてバージンロードを歩く役は父親なのだけれども、名雪には父親がいないので秋子さんが代役を勤めることになっている。

 あゆちゃんと真琴ちゃんは名雪の長いヴェールを持つ役で、本来なら小さい子供が担当する役なのだけど、この二人が似合いすぎだという相沢くんにはあたしも同意見だわ。

 

 荘厳華麗なパイプオルガンの旋律が静かに鳴り響く中、秋子さんにエスコートされた名雪があたしたちの横をすぎていく。神父さんのいる祭壇の前で待っていた相沢くんが、入場してきた名雪を見て目を白黒させているのが見えるわ。

 その気持ちはあたしには良くわかった。ここに集ったメンバーの中で、今の名雪に対して『私のほうがちょっと綺麗みたい』って言えるのは、ほんのわずかな人だと思うから。その証拠にあたしの隣では『えう〜、とても勝ち目がありません……』と栞が悔し涙を流しているし。

 祝福の祝詞をあげる神父さんの声が重々しく響き、式は厳かな雰囲気のまま滞りなく進行していく。神の前で永遠の愛を誓う二人の姿は、あたしの心の中に永遠に刻み込まれただろう。

 

 おめでとう、親友。

 そして、さようなら。あたしの初恋……。

 

 白い教会に鳩が飛び、二人を祝う愛の鐘が高らかに鳴り響く小道を、本日の主役である二人がライスシャワーの洗礼を受けつつ歩いていく。

「おめでとう、二人とも」

「おめでとう」

「……おめでとう」

「おめでと〜」

「おめでとう」

 参列した人たちが口々に祝福の言葉をあげる。まるでお日様のようなにこやかな微笑みを浮かべている名雪とは対照的に、真っ赤な顔をしてそっぽを向いている相沢くんのほうがあたしには印象的だったわ。

 まあ、無理も無いわね。あの名雪を直視できるほど、相沢くんも百戦錬磨というわけでもないでしょうから。

「香里〜」

 そんなことを考えていると、不意に名前を呼ばれる。ふと気がつくと、あたしの手の中には花嫁さんのブーケが納まっていた。

 これを受け取った女性は次に結婚することが出来るという、いわくつきのアイテムだ。笑顔でこれを投げてくれた名雪には悪いけど、今のところあたしにその予定は無いのよ……。

 そして、相沢くんは新妻となった名雪をお姫様抱っこで抱えあげ、赤いコンバーチブルにドアも開けずに乗せた後、一足先に披露宴会場へと向かう。あたしはブーケを手にしたまま、過ぎ去っていく二人の姿をずっと眺めていた。

「よう、ひさしぶりだな。美坂」

 そんなとき、あたしの背後から声がかかる。

「北川くん?」

 おどけた様子で軽く右手を上げていたのは、北川くんだった。いつものラフな格好ではなく、フォーマルな格好をした北川くんはいつもとは様子が違い、妙にしっくりとなじんで見えた。

 普段の仕事はきっとこういうきちんとした格好なのだろう。学生時代とは違って頼もしいような印象がしたわ。

「どうだ、美坂。この後予定がないならオレと食事でもしないか?」

「それは魅力的な提案だわ」

 積もる話もあったし、こうして会うのもひさしぶりなので、あたしは披露宴の会場を抜け出した後北川くんの行きつけの店で飲むことにした

 

「いや、本当にひさしぶりだな、美坂」

「そうね、北川くん」

「あんまり美人になってるもんだから、最初誰だかわからなかったぞ」

「やだ、もう!」

 いつもの北川くんの冗談なのだろう。そう思ったあたしはとりあえず、軽く聞き流しておくことにした。

「それにしても、あの二人が結婚とはね。まだ大学があるんだろう?」

「そうだけど……。ちょっと事情がね……」

 それを聞いて北川くんは、ああとうなずいた。

「……できちゃったのか……」

 それには答えずに、あたしはただ首を縦に振るだけ。

「それじゃ、相当もめたんじゃないのか? 栞ちゃんとか、色々……」

「そうね……」

 出来ることならあのときのことは思い出したくはない、というのがあたしの本音。名雪の妊娠が発覚した後の騒動は、記憶に新しいところだ。

「みんな大丈夫よ、最後にはわかってくれたから」

「それでみんなはどうしてる?」

「いつもどおりよ」

 あたしは軽く微笑んで話を続けた。

「あゆちゃんはヤケたい焼き。真琴ちゃんはヤケ肉まん。そして、我が愛する妹はヤケアイス……」

「大丈夫なのか? それ……」

「天野さんが一緒だから大丈夫でしょう?」

「天野ちゃんも苦労性だな……」

 そう言って北川くんは軽く笑う。まあ、ああいう騒ぎには落ち着いた人がついている方が安心できるし。

「そういえば、川澄先輩たちはどうしているんだ?」

「あの二人は感傷旅行よ」

「感傷旅行?」

「『祐一よりいい男に会いに行く』だそうよ」

 あたしは川澄先輩の口調を真似てそう言ってみる。この二人の組み合わせは、とにかく前向きなんだか後ろ向きなんだかわからないわね。

「そして、美坂はこうしてヤケ酒と……」

「……そういうこと……」

 あたしはにっこり微笑んだのに、何故か北川くんはおびえまくっているようだわ。不思議ね。

「今夜はとことんつきあってもらうわよ。北川くん」

「……ああ」

 それでも北川くんは相槌をうってくれる。

「オレも飲みたい気分なんでね、オレのほうからお願いするよ」

「ふふっ」

「な……なんだよ、美坂……」

 もう酔ったのかしら、北川くんの顔が赤いわ。でも、そんな北川くんに、あたしは妙な親近感を憶えた。

「意外と、似たもの同士なのかもしれないわね。あたしたちって……」

「かもな……」

 その後あたしたちは、相沢くんたちを肴にして大いに盛り上がった。

 

「……ゔ」

 まばゆい光に網膜を妁かれないように注意しながら、あたしはゆっくりと目蓋を開けていく。なんだか体の奥のほうに鉛の棒でも入れられたみたいに重く感じるわ。こみ上げてくる吐き気に憂鬱な気分になりながら体を起こすと、そこは見慣れない部屋で、しかもあたしはなにも身に着けていない……。

 あたしは鈍く痛む頭を総動員して、昨日の記憶を掘り返す。確か昨夜は北川くんと飲んでて……。

 北川くんに勧められるままにあたしはブラディなんとかって言うのを飲んだのよね……。口当たりが良かったから何杯かおかわりしたけど、まさかこんなに酔うなんて……。お酒に詳しくないから知らなかったわ。

 それで今こういう状況っていうことはつまり……。

「すー」

 あたしの隣から安らかな寝息が聞こえてくる。よく見るとそれは北川くんだった……。

「きききき北川くん?」

「へ? 美坂……?」

 あたしの大声に驚いたのか、北川くんが目を覚ます。お互いになにも着ていないので、何故かあたりには気まずい雰囲気が立ち込めてきた。

「スマン! 美坂!」

 突然北川くんは平謝りに謝った。

「いくら酔っていたとはいえ、この責任は取るから」

「あ、いいのよ。気にしないで、酔ってたのはあたしも一緒だから……」

 土下座してとにかく謝る北川くんを見ていると、なんとなく気の毒になってくる。それに、こうなったのはあたしの責任でもあるわけだし……。

「……って、やば……」

 時計を見た北川くんの顔が、あたしのときよりも青ざめて見える。どうやら出勤時刻を大幅にすぎてしまっているようだ。あたしの目の前で北川くんは大慌てで仕事に行く準備をはじめる。

「ところで北川くんって、今付き合っている人っているのかしら?」

「とくにいないけど……なんでだ?」

「……ちょっとね」

 北川くんの話を聞いて、あたしはそうじゃないかなと思った。もしそういう人がいるのなら、もう少し部屋が綺麗なはず。少なくともここは女の子を連れてこれるような部屋じゃないわ。

「そういえば美坂はどうするんだ? 学校あるんだろ?」

「自主休講よ」

 流石に二日酔いの頭で学校に行く気はないわ。それに昨日の服のままなんて……。まあ、あたしの言葉を聞いて北川くんは、学生はいいなあ、と呟いていたけれど……。

「じゃあ、俺はもう行くけど……」

 そう言って北川くんはあたしに鍵を投げてよこす。どうやらこれが部屋の鍵みたいね。

「鍵は玄関のわきのポストに入れといてくれ」

 そうして北川くんが慌しく部屋を出て行くのを、あたしはベッドの上で毛布を胸元にまで引き上げたまま黙ってみていた。

 臭うわね……一体いつ洗濯したのかしら……。

 あたしは改めて部屋の惨状を見る。

 男の一人暮らしってこうなのかしら……。

 部屋の隅にはいつのものなのかわからないごみの袋が山になっているし、台所にはカップめんの容器が山になっている。

「ううっ……」

 シャワーでも浴びようかと思ったけど、なによこの浴室は……。洗濯物が山になってるし、よくこんなところで生活できるわね……。

 あたしはため息を一つつくと、部屋の片づけをはじめた……。

 

「おかえりなさい」

「ただい……ま……」

 北川くんはびっくりしたような顔であたしを見ている。そんなに驚かなくてもいいと思うんだけど……。

「もしかして……美坂がやってくれたのか? これ……」

「そうよ」

 なんとなくだけど、意外そうな北川くんの表情に不満を覚えるあたし。名雪ほどじゃないけど、あたしにだってこれくらいのことはできるのよ。

「おお、床が見える……」

「一体いつから掃除してなかったのよ……」

「いや……本来オレは綺麗好きなんだが……仕事が忙しくなるとどうしても後回しになってな……」

 苦しい言い訳ね……。あたしは北川くんが持っているものを見て、さらに意地悪な気分になってしまう。

「……せっかくご飯作ってあげたのに、そういうのがあるんじゃいらなかったわね」

「いや、これは違うぞ、誤解するな美坂」

 そう言って北川くんはコンビニ弁当を背中に隠す。まあ、なに食べようと北川くんの自由だけど、そういうものばかりだと栄養が偏っちゃうじゃないの。

 

 この日以来、あたしはなにかと北川くんの面倒を見るようになってしまい、そんなあたしたちが世間一般で言う恋人同士になるのにそれほど時間はかからなかった。

 なんていうのか……。放っておけないっていうか……そんな感じがして……。実はこれが、あたしと潤との馴れ初めだったりするのよね。

「……え?」

 あの日から何ヶ月かたったある日、あたしからの報告に潤の顔色は蒼白になる。その表情からは喜びと不安の色が窺えた。まあ、無理も無いわね……。

「だから、できちゃったのよ。あなたの子よ、潤」

 もう一度あたしはそう言う。

「わかった……。結婚しよう、香里。……って、順番逆のような気がするなぁ……オレ……」

 こうして、あたしと潤はめでたくゴールインすることになり、あのブーケの伝説は真実だったことを実感した……。

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