この日祐一は、中庭で栞と会っていた。

「俺のことはお兄ちゃんと呼んでくれてかまわないぞ」

「嫌です。そんなことを言う人は嫌いです」

 栞はいきなり怒り出した。

「お…おい、栞?」

「お姉ちゃんと祐一さんがそういう関係だなんて…わたし絶対に嫌です」

「いや、あのな。それは、そういう意味じゃなくてだな…」

 なんとか栞の誤解をとこうと祐一は必死になった。すると、不意に誰かに肩をたたかれた。

「随分遠回しなプロポーズね。相沢君」

 祐一が振り向いたその先には、香里の笑顔があった。

「相沢君の気持ちは嬉しいわ。でも、だめ」

「いや、あの…誤解しないでほしいんだが…」

 しかし祐一は、何を言っても無駄だな、と心のどこかで悟った。

「さあ、行きましょ栞。あなたも気をつけなきゃだめよ。男はみんな狼なんだから」

「はい」

 仲良く去っていく二人の背中を眺めつつ、祐一はただ呆然と中庭に立ち尽くした。

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