深夜の公園で、祐一と栞は最後の時を迎えようとしていた。
「栞、奇跡が起きたら、その時は俺の似顔絵を描いてくれないか?」
「ええっ?」
栞は急に大きな声を出し、まじまじと祐一を見つめた。
「祐一さん……。それ……本気なんですか?」
「本気も何も、別に似顔絵描くくらいいいだろ? それとも、栞は嫌なのか?」
「いえあの、い……嫌じゃないです。嬉しいです、祐一さん。でも、こう言う事はきちんとしないと……」
「きちんと?」
「はい。まず、わたしの両親に会ってもらって……それから、祐一さんのご両親にも、きちんとご挨拶をしないと……」
「ちょっと待て、栞。お前、一体なんの話をしてるんだ?」
「え……? だって祐一さん、わたしに……」
栞は祐一に事情を説明した。
「プロポーズ?」
「はいっ!」
栞は大きく頷いた。
「『俺の似顔絵描いてくれ』って言うのが?」
「きゃっ……」
栞は嬉しそうに顔を赤らめた。
「……何で、そんなんがプロポーズになるんだ……?」
「ち……違うんですかあ?」
栞は胸を押さえ、大きく深呼吸した。
「もう、祐一さん。あまりびっくりさせないで下さい」
「びっくりしたのはこっちだっ!」
なんとなく、この街で暮らしていく事に自信が持てなくなる祐一であった。
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