かつてあゆと約束した学校。今は大きな切り株だけが残るこの場所で、祐一はあゆと最後の時を迎えようとしていた。

「祐一くん。ボクの最後のお願いです」

 あゆは言いにくそうに指をもじもじとさせた。

「ボク……ボクね……祐一くんの子供が欲しいの!」

 言っちゃったー、と言わんばかりにあゆは両手で顔を覆った。

「最後の思い出に……って、だめ……?」

 その言葉を聞いた祐一は、思わず頭から雪に突っ込んでいた。

「あ……あのなあ、あゆ……」

 祐一は何とか身を起こした。

「いくらなんでも、そんな事出来るわけがないだろう。不可能だ」

 ゲームのシステム的に、という意味で祐一は言った。

「え……? でも祐一くん。自分に出来る事ならなんでもって……」

 あゆは息を呑むと、その膝ががくがくと震えだした。

「そっか……そうだったんだ……」

 あゆはがっくりと膝を地面につくと、そのままよよと泣き崩れた。

「祐一くんに、そんな事情があったなんて〜」

「おいこら、ちょっと待て。何か誤解してるだろ、おまえ」

「だって祐一くんは不可能で、出来ないんでしょ?」

 祐一の動きが一瞬止まった。

「うぐぅ、ボクの事は忘れてください。はじめからいなかったんだって、そう思ってください」

 そしてあゆの姿は消え、そこにはただ一人取り残される祐一の姿があった。

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