それはある夜のことだった。名雪は一人部屋にこもり、かっちりと膝を抱えていた。

「どうして……」

 明りをつけない暗い部屋の中で、名雪は膝を抱えたまま、ポツリと呟いた。

「どうして祐一は……わたしの事を見てくれないの?」

 名雪の頬に、一筋の涙が伝う。

「そうか、考えてみるとそうだよね。わたし、寝る事と、走る事以外に特技ないもんね……」

 名雪の声に、嗚咽が混じりはじめた。

「舞さんは超能力者で……。栞ちゃんは病弱で……」

 だんだん名雪の嗚咽が激しくなっていく。

「真琴は妖弧で……。あゆちゃんは幽霊だもん……」

 ついに名雪の両目から、大粒の涙が溢れ出した。

「わたしだけが……。わたしだけがみんなと違う……」

 名雪はそのまま泣き崩れ、とめどなく溢れる涙が床を濡らした。

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