春の日
それは、ある晴れた日の出来事だった。
「な〜ゆ〜きっ!」
「うにゅ〜?」
いつものように寝こける親友を、香里はいつものように起こした。
「『うにゅ〜』じゃないわよ。今日遅刻した理由を書いて、ちゃんと提出しなさい!」
これもクラス委員の務め、と割り切りながらも、香里は自分の親友である名雪に厳しく声をかける。
「うにゅ〜……」
目が糸のように細くなりながら、名雪はのろのろと理由を書き込んだ。
香里が見ると、そこには一言『寝忙』と書かれていた。
間違いを指摘するべきなのか、それともこれであっているのか。
幸せそうに眠る親友を見つめながら思い悩む、美坂香里十六歳。高校二年の春の日の出来事だった。
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