愛煙家、祐一
俺は今、とあるファミレスに来ている。
商店街の外れにあるこの店は普段の生活域には無く、その意味ではちょっとした穴場となっている店だ。
俺がなぜこの店に来ているかと言うと、それは俺自身の嗜好によるものだ。
その嗜好とは、タバコの事である。
未成年者の喫煙は法律で禁止されている。その事は俺も良く知っている。
だが、俺は吸うといっても一日に何箱もあけるような吸い方はしない、月に半箱あけるのがせいぜいだ。
つまりはちょっといやな事があったときの精神安定剤として活用しているのだが、そのためにタバコを吸うと言うのは流石に体裁が悪い。
そんなわけで日ごろからお世話になっている水瀬家では吸うことが出来ず、しょうがないからベランダでホタルでも気取ろうとしたが、
「祐一。ここはわたしのお気に入りの場所なんだから、タバコなんて吸っちゃだめだよ」
と、名雪にしっかり釘を刺されてしまったし、下手に天野あたりに見つかろうものなら、
「いいですか相沢さん。タバコの煙には主流煙と副流煙とがあって、このうち他人に迷惑をかけるのが……」
と言う具合に、タバコの被害について耳の痛いお叱りを受ける事になってしまう。
そんなわけで俺は、それこそ誰も来ないようなファミレスで、一人心行くまでタバコを満喫しようと思い立ったのである。
席についてしばらくすると、ウェイトレスがお冷と一緒に灰皿を持ってきた。
「すいません」
と俺が言うと、ウェイトレスはお冷を置き、灰皿を持って去っていった。
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