雨降って…

 

「祐一の馬鹿っ!」

 些細な事でけんかをして、名雪は怒った。祐一のあほ、まぬけ。包茎、短小、早漏。

「なんだとこのっ!」

 売り言葉に買い言葉で祐一も怒った。激しく名雪に罵詈雑言を浴びせかける。

「ひどい、祐一……」

 名雪は涙目になるが、それにもかまわず祐一は言葉の暴力を続ける。

「あらあら、けんかはだめですよ?」

 それを見かねた若作りの秋子さんが仲裁に入る。微笑む姿は若く見えても、目じりの小じわは隠せない。

「なんですって?」

「うわ……お母さん」

「待ってください、何か変じゃないですか?」

 ぎく。

「おい……」

 な……なんだ?

「さっきから黙って聞いてれば、地の文の分際でよくも好き勝手やってくれたな……」

 ぼ……暴力反対……。

「秋子さん」

「了承」

 げっそれは……。

 や……やめろ……。やめてくれっ! う……うあああぁぁぁぁ……。

 グレグロゲロリップ……。

 

「まったく、とんでもない奴だ」

「でも、ごめんね祐一。私がつまらない意地を張っちゃったせいで……」

「俺のほうこそごめんな、名雪」

「二人とも、もうけんかしちゃだめよ?」

「「は〜い」」

 

 ……これが本当の……。雨降って、地固まる……。がくっ……。

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