プロローグ

 

「はぁ……」

 厚く雲の立ちこめた空を見上げ、少女は物憂げにため息をつく。その姿はあたかも一枚の絵画であるかのように、その場に溶け込んでいた。

 見上げる空から降る白いもの。それは灰、生きとし生きるものに死をもたらす死の灰。

 そして、降る雪は黒い……。

 一体いつから……。そして、いつまで……。

 少女がいる場所は唯一人間が、他の生き物たちが暮らせるように調整されたドーム。だが、そこもいつまで持つか、いつ破壊されるかわからない。

「はぁ……」

 再び少女の可憐な唇からため息が漏れる。それはこのドームの行く末を案じてか、それとも自分の身を案じてのものなのか。

「……こちらにおいででしたか、姫様」

 その声に振り向くと、見慣れた執事がそこにいる。

「出立の準備が整っております。どうかお早く」

 姫様と呼ばれた少女は後ろ髪惹かれる思いながらもその場を後にする。

(……さようなら……)

 そして、少女はもう振り返る事無く、執事の後に続いて歩き出す。

 その行く手にあるのは希望か、それとも絶望なのか……。

 それは、誰にもわからない……。

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