エピローグ

 

「やっと終わったわね」

「そうだな」

 自動戦闘人形(パペット)の脅威も去り、王女月宮あゆの指導の元に復興を開始したムーンパレスの様子に、祐一は安堵の息を漏らした。こういう表現もあれだが、機能を停止した自動戦闘人形(パペット)要塞惑星(ネメシス)の残骸は資源の宝庫だ。概算ではあるが、ムーンパレスはこの資源で向こう十年は大丈夫だろう。

 とりあえず今回の仕事はファーイーストハート連合とムーンパレスの双方から結構な額の報酬がもらえたので、成功といっていいだろうし。

(これでしばらくの間は、香里の機嫌もよさそうだな)

 そうひそかに思う祐一ではあるが、香里に言わせるとこの程度の金額では、赤字の穴埋めにもならないそうなのだが。

「よしっ! それじゃキーストンに帰還するか。カノン発進っ!」

「待ってください」

 美汐の声に出鼻をくじかれる祐一。

「なんだよ」

「艦内重量に問題があります」

「艦内重量?」

 宇宙を移動する艦艇は、乗員や荷物などの総質量から逆算して、最適な航路を算出するように設計されている。そのため、少しでも重量が増えたりすると、そのぶん余計な手間が増えてしまうのだ。

「わかった、場所はどこだ?」

「第三ブロック、第六居住区です」

「よし、ついて来い真琴」

「あ……あう?」

 カノンが発進シークエンスにはいっているので、名雪と香里、栞と美汐は手が離せない。そこで一番暇な真琴を連れて、祐一はブリッジから飛び出した。

「あ、早かったね」

「あゆ……」

 問題の部屋に飛び込むと、そこにはあゆがいた。しかもしっかりインナージャケットを着た状態で。

「どうしてお前がここにいる?」

 祐一の疑問も至極もっともだ。なにしろ、ついさっきまでブリッジのメインスクリーンに映っていたのは、当のあゆ本人なのだ。

「複雑な事情があるんだよ……」

「どんな事情だ?」

「実は……ボク複製人間(クローン)なんだよ」

 詳しく聞くと、オリジナルの月宮あゆは最初に自動戦闘人形(パペット)の攻撃を受けた際に大怪我をしてしまい、昏睡状態が続いていたのだそうだ。そこで公務を代行させる目的で、あゆが製造されたのだという。

 ところが、オリジナルのあゆが奇跡的に目覚めたため、クローンのあゆが不要になってしまったのだ。そこで、どうせ処分されてしまうのならと、密航を決意したあゆであった。

「どうするの? 祐一……」

「どうするって言われてもな……」

 インナージャケとの袖を引く真琴の声に、なんとも情けない声で返す祐一。

 もっとも、みんなの意見を聞いたところで、反対するの祐一一人くらいだろう。流石に五対一では勝ち目がない。

「しょうがないか……」

 短い逡巡の後、祐一は結論を出した。

「給料安いぞ?」

「うん。ありがとう、祐一くん」

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