第三章 ここは地球

 

 祐一の意識は深い闇の中にあった。

(どこだ……ここは……)

 墨汁でもたらしたかのような闇に包まれ、祐一は上下の区別すらつかず、その上自分の体さえもはっきりとは認識できない状態だった。

(死ぬのか? 俺……)

 名雪の悲しみを癒してやることもできないまま、こんな場所で死んでしまうのか。と、祐一は思った。

(大丈夫だよ……)

 不意に優しい声が響いた。

(君は……?)

(ボクはあゆ。君を助けてあげる)

 そのとき祐一は、まばゆい光に包まれた。そして、祐一は見た。光の中に翼を持った少女の姿を。

 

「ここは……」

 まぶしい光で祐一は目を覚ました。体がずっしりと重かったが、祐一はなんとかコンソールのスイッチを操作し、機外の情報を収集した。

「大気がある。と、言うことは地球か……」

 木星からここまでよくも弾き飛ばされたものである。その割には祐一の体に異常は感じられなかったし、テムジンも快調とはいかないまでも、機能は正常だった。

 しかし、それはいいとしても、祐一は途方にくれた。ここが地球なのはわかるのだが、地球のどこなのかがまるでわからなかった。一応VRにはGPSが搭載されているが、祐一のテムジンは火星に対応しているため、地球のGPSには対応していないのだ。

 どうするべきか祐一が悩んだそのときだった。

『こいつMARZだっ!』

 突然の声に、祐一は現実に引き戻された。よく見るとVOXジョーとVOXジェーンの二機に囲まれていた。普通なら警報音が鳴るはずなのだが、いかんせん祐一のテムジンは地球上のどの勢力にも属していないため、地上の敵味方識別信号には対応していないのだ。

 おそらくこの二機は不審な機影を察知して確認に来たのだろうが、その割には様子が変である。

 確かに火星を所轄領域とするMARZが、いきなり地球に現れたのでは、驚くのも無理はない。

 祐一は事情を説明しようと一歩踏み出した。

『う……うわぁぁっ!』

 突然ジョーが発砲してくる。それにあわせてジェーンも攻撃を開始した。

 

 VOXジョーは、重戦闘VRとして完成度が高かったドルカスの直接的な後継機といえる第3世代型VRである。中距離戦闘に適性が高いとされた本機は、抜群の扱いやすさから兵の人気も高い。VOXジェーンはジョーの派生型で、ジョーとは多少の装備が異なる異種同型機である。いずれの機種もユニットスケルトンによって機体が構成されているため、信頼性の高いVRとなっている。

 

 いかに二機のコンビネーションが優れていようとも、祐一の敵ではなかった。近距離から近接に移行する間のわずかな隙をつくことで、簡単に決着はついた。しかし、困ったのはこれからで、この事により祐一は地上の勢力から敵として狙われ、孤立無援の状態のまま地球に取り残されることになってしまった。

 

「今回の木星圏におけるジュピタークリスタルの消失、及びそのインパクトに関しての原因は不明ですが、相沢三査が地球に転送されたのは、それが原因であると考えられます」

 火星に戻る回収艇の中から、香里は司令部に状況報告をした。

「それにより今後どのような影響が出るかは不明ですが、深刻な影響が出るであろうことは間違いありません。おそらくは時間の問題であると思われます」

『わかった。報告ご苦労だった、直ちに帰還したまえ』

「了解」

 短い通信を終えた後、香里は唇を噛んだ。

 祐一が転送された先は禁制領域『シバルバー』であった。地球圏でFR‐08(フレッシュリフォー)と勢力を二分する企業国家、TSCドランメンが管理するこの地は、用途が定かにされていない上に許可無き進入が許されたことがない場所だ。

 それに地球圏ではVCa4年に始まった大規模な限定戦争、オラトリオ・タングラム戦役が未だに継続中である。このままでは祐一はDNA、RNAを問わず、全ての勢力から攻撃対象とされるだろう。

 そうなる前に何とかして手を打たなくてはいけないのだが、MARZ作戦司令部と禁制領域を管理するドランメンとの交渉は難航していた。

 結局香里にできることは祐一を信じることだけなのだが、どうすることもできない歯がゆさが香里を苛立たせていた。

「お姉ちゃん……」

 そんな香里を、すぐそばで栞が不安げな表情で見つめていた。

「祐一さんは……大丈夫なんでしょうか……?」

「大丈夫よ」

 香里は優しく微笑んで栞を抱きしめた。

 自分がいつまでも不安げな顔をしていると、栞まで不安げにさせてしまう。だから香里は無理やりにでも笑顔を作る必要があるのだ。

「信じましょう。相沢くんと、わたしたちが調整したテムジンを」

 

 その日のうちに祐一が受け取った連絡は、シバルバー内で非交戦協定の成り立っている緩衝地帯までのルートを示したGPSと、略式ではあるが二査への昇格であった。

 地球圏ではVCa4年以来オラトリオ・タングラム戦役が継続中である。結果的に祐一のテムジンはDNA、RNAを問わずに攻撃対象とされるということだ。そのため祐一は、一刻も早く緩衝地帯へ移動する必要がある。

 また、ここはMARZの所轄領域外であるため、直接的な援助は何一つ受けられない。ある意味絶望的な状況に、祐一は深いため息をついた。

 こうしていても仕方がないので、祐一は前進を再開した。

 

 しばらくすると、祐一は一台のトレーラーに出会った。

「MARZの方ですね?」

 中から姿を現した少女が訊いた。

「そうだけど、君は?」

「申し遅れました天野です、天野美汐。私はドランメンの使者として参りました」

「ドランメンの?」

「詳しい話は後ほど。まずはあなたのテムジンを」

 祐一は言われたとおりにテムジンをトレーラーに乗せた。テムジンにはマインドブースターが装備されていて、他のVRと比較しても『取り込まれにくい』性質を備えているといっても、流石にVRに乗りっぱなしで移動すると言うのはきつい。祐一はこの天野という少女を信じきっているわけではないが、このままVRにのったまま移動し続ける事を考慮すると、その申し出はありがたかった。

「現在木星圏におけるフォースの活動はMARZによって保障されています。ですから私どもとしましても、MARZ所属であるあなたを無下にはできないのです」

 妙にビジネスライクな美汐の口調に、祐一は引っかかるものを感じた。要するに、自分のような外からの侵入者には早くここから出て行ってもらいたいのだろう。美汐ははっきりと言葉にはしていないが、祐一はそう思った。

「あなたにはこの先で薔薇の三姉妹に接触していただきます」

「三姉妹に? どうして?」

「総帥閣下よりシバルバー脱出に必要なものを受け取っていただきます。それがないとここからの脱出はできません」

 

 三姉妹との会合点は少し開けた空間になっていた。

『随分探しましたよ』

『何や、こんなところにおったんか』

『また、会えるとは思っていたがな』

 祐一は三姉妹のマイザーと相対していた。

『私たちは総帥閣下より、あなたに情報提供をするように言い付かってきましたが……』

 秋子のフェアービアンカがすっと前に出てファイティングポーズをとる。

『先日の遺恨もあるわけですし、ただそれだけと言うわけにもいきません』

『そんなわけで、戦闘開始やでっ!』

 続いて晴子のエヴリンがファイティングポーズをとった。

『嬉しそうだな、晴子さん……』

 そして、最後に聖のシャルロッテもファイティングポーズをとった。

 祐一がテムジンにファイティングポーズをとらせた、丁度そのときだった。

『待て待て待て待て〜い!』

 突如として北川のハッターが乱入してきた。

『気をつけろ相沢。こいつら悪名高い毒ジャム三姉妹だ!』

『毒ジャムとは……言ってくれますね……』

 静かな口調の中の、確かな秋子の殺意を祐一は感じた。

『友の命は我が命! 毒ジャムども。やるならやれ、俺から先に!』

 ここが見せ場とばかりに、北川のハッターは胸をはった。

『カモ〜ン!』

 叫ぶなり北川はハッターを三姉妹に向けて疾駆させる。先程の一言が逆鱗に触れたのか、三姉妹は祐一を無視して北川に攻撃を集中した。

『ぬがぁぁぁっ!』

「口は災いの元か……」

 タコ殴りにされる北川の姿をしばし呆然と眺めていた祐一だったが、三姉妹の攻撃が北川に集中する隙をダッシュ攻撃で狙い撃ちにしていった。

『くっ……』

『しまった……』

『おや……』

 祐一は秋子、晴子、聖と次々に撃退していった。

 戦闘が終わってみると、北川の叫びはむなしいだけだった。

 

『毒ジャムやないでっ!』

 晴子が叫ぶ。

『麗しの薔薇だぞ、我々は』

 呆れた様子で聖が言う。

『けちがつきましたね。引き上げますよ』

 秋子がフェアービアンカを変形させて飛び去った。

『あ〜もう、ごっつむかつくわ!』

 続いて晴子も飛び去っていった。

『忘れるところであった。ほら……』

 祐一は聖からクリスタルを手渡された。

『それはワイルドクリスタルと言う。ここからの脱出には必要な物だ』

 それだけ言うと聖も飛び去っていった。

 

「久しぶりだな、相沢」

「そうだな、北川」

 トレーラー内に設けられた居住設備の中で、二人は熱く友情の握手をかわした。

「それにしても何だ? このワイルドクリスタルってやつは……」

「さあな、そいつは俺にもわからない」

 祐一の問いに、北川は肩をすくめた。

「ただ、司令部はなにかを知っている様子だったけどな」

「そのあたりはどうなんだ? 天野」

「そう……ですね……」

 祐一の問いに、美汐は視線をそらした。

「詳しいことは申せませんが、このワイルドクリスタルは域内に散在しています。シバルバーから脱出するためには、これを可能な限り回収する必要があります」

「回収するとどうなるんだ?」

「それは……機密事項なので言えません……」

 それっきり美汐は黙ってしまった。その煮え切らない態度に北川は不快の意を示したが、祐一はそれをなんとかなだめた。

 その後の戦闘もワイルドクリスタルの回収を主軸に、祐一たちは域内に存在するドランメンの拠点を防衛したり、敵の補給線を分断したりするミッションを順調にこなしていた。だが、定時連絡を入れるときの司令部の対応はシバルバーからの脱出指示のみで、肝心のワイルドクリスタルに関する情報は開示されなかった。

「理解できんな。シバルバーからの脱出を指示しながら、肝心の情報をよこさないなんてな……」

 北川が率直な疑問を口にする。確かにMARZの所轄領域ではないシバルバー内で、無闇に情報を開示するわけにもいかない事情もわかる。しかし、北川の心には疑惑の種が芽生え始めていた。

「なあ、相沢……」

 トレーラーで移動中に、北川が小声で話しかけてきた。

「俺たちはこのシバルバーで状況も知らされないまま右往左往している。俺にはこのワイルドクリスタルがなにかをおびき出すためのエサ、そう思えてならないんだ……」

 

「緩衝地点まであとわずかです。もうじきシバルバーから脱出できます」

 そう美汐が告げた直後だった。

『だが……この程度の試練では物足りないだろう……』

「な……なんだ?」

 突如として入った通信に北川が声を上げる。

『MARZの犬どもよ、駄犬どもにうろちょろされるのは煩わしい……。我らがダイモンの贄となれ……』

 青い空を突き抜け、緩衝地点に飛来したのは重機動要塞ジグラットだった。

『また、こいつかぁ〜!』

 語気も荒く北川がハッターで突っ込んでいく。祐一もテムジンでそれに続いた。しかし、よく考えてみると近接攻撃がほとんど効かないジグラットに、近接攻撃に特化したハッターで攻撃するというのは、ある意味無謀である。

 よく考えてみると、北川が消息を絶ったのはこいつが原因なのかもしれない。そう祐一は思った。

 

 アファームド・ザ・ハッターは、電脳暦の誇るVRパイロット、イッシー・ハッター軍曹が独自にカスタマイズした高性能VRである。機動力を重視したアファームドJと、装甲を重視した支援型のアファームドTの長所を兼ね備えた驚異の高性能アファームドだ。武装はJCタイプに準じたドラマティック・トンファーを装備しているが、ダキアスガンシステムなどの射撃武器は一切装備していない。

 しかし、移動力を含めた機動性能はVRの中でもトップクラスで、言うなれば機体そのものが飛び道具であるとも言える。

 本来はハッター軍曹の専用VRなのだが、近接戦闘に特化した武装の潔さから一般にも人気が高く、後に同型機が少数生産されている。

 

 流石のジグラットも、祐一と北川の連携攻撃を受けてはひとたまりもなくスクラップとなる。

『相沢っ! 俺はもうどうにも我慢ならんっ!』

 北川が吼えた。

『正体不明の敵! 正体不明の作戦! いらいらするっ!』

「おい、北川」

『なにかが動いてる……。俺達の知らないどこかで……』

 北川はハッターを反転させた。

『ここで別れよう。俺は俺の道を行く、真実を見極めたいんだ』

 祐一がとめる暇もなく、北川はハッターを疾駆させ戦線から離脱した。

 荒ぶる魂をとめる手立てはない。そのことを実感した祐一だった。

 

 先程のジグラットとの遭遇は『ダイモン』と名乗る謎の勢力に、VRのMSBSがハッキングされた結果引き起こされたことが判明した。どうやら敵は司令部や祐一の思惑を超えたレベルでの情報戦争遂行能力があるようだった。

 司令部はこのような事態を考慮して最小限度の通信にとどめており、情報の開示にも消極的だったのだが、それすらもあざ笑うかのごとくダイモンは堂々とハッキングを行ってきたのである。

『北川軍曹の離脱について当局は関知しない、貴官は自身の任務に集中せよ』

 これが司令部から祐一に送られた通信だった。結局祐一はワイルドクリスタルの回収、および緩衝地帯への移動を継続して行うことになった。

「ワイルドクリスタルは域内の結界を維持、構成しているものです。つまり、あなたがシバルバーから脱出するためには、結界を解く必要があります」

 丁度このころにはMARZとドランメンの間で交渉が妥結していた。それは祐一の身の安全を保障するものではなかったが、祐一は美汐からシバルバー脱出についての説明を受けることができた。

「今後の戦闘でもワイルドクリスタルを入手することもありますが、それは決して偶然ではありません。なぜなら、クリスタル同士は互いに共鳴し、誘引しあっているからです」

 そして、脱出のためにはなるべく多くのワイルドクリスタルを集める必要があるという。

「そんなにご大層な結界まで張って、一体ここにはなにがあるんだ?」

「ヤガランデをご存知ですか?」

 祐一は言葉を失った。

 

 幻獣戦機ヤガランデは地球上に存在するアースクリスタルを介して現出する破壊神で、その外見こそVRに酷似しているものの、攻撃力、防御力、機体寸法など、その全てが通常VRとは一線を画するものである。最初に現れたのはオペレーションムーンゲートの時で、現在ドランメンが管理するこの地であった。最近では火星戦域にもその幻影が出没し、深刻な脅威となっている。

 

「そのため、現在ではこの地を封鎖しているのです。そして、結界を解くと言うことは……」

「ヤガランデを解き放つことになる……。と、言うことか……」

 美汐は静かにうなずいた。

 確かにそれなら、今まで情報の開示を拒んでいた理由も納得できる。幻獣を解き放つことの重大さを考えると、やむを得ない事情であると言える。

 ある意味においては、北川の疑念も的外れではなかったのだ。

「ヤガランデ……か……」

 祐一自身も火星戦域で何度か遭遇したことがあり、その深刻な脅威は骨身にしみて知っていた。だが、だからと言って後に引くわけにはいかない。なんとしても祐一はシバルバーを脱出し、火星に帰らないといけなかったからだ。

 結局美汐がシバルバーの結界を解き、そして現出するヤガランデを祐一が撃退すると言う作戦をとることになった。

 祐一が回収したワイルドクリスタルを使って美汐がワイルドゲートを開く。これがシバルバーから脱出する唯一の方法であった。それと同時に祐一の機体の周辺に、高エネルギー反応が現れた。ヤガランデの実体化である。

 幻獣戦機ヤガランデ。その覆い被さるような巨体は、見るものを圧倒する。

 右手の巨大光弾、左手の巨大光球、肩部から放たれる拡散レーザー、どれも一撃で致命傷になりかねない攻撃であった。近接戦闘領域に入ると、ヤガランデは左右の手を勢いよく振り下ろしてくる。

「あれに当たったらただじゃすまないな……」

 そう呟きつつも祐一は冷静に相手の攻撃をかわし続けた。

 ヤガランデの攻撃は強力な分隙が多く、その間隙を縫って攻撃を仕掛けることで、祐一はなんとかヤガランデの幻影を消滅させた。

 

「あなたには酷な状況でしたが、シバルバーからの脱出は果たされました」

 素っ気無いほどの別れであるが、祐一は美汐の優しさを知っていた。もし彼女がいなければ、祐一はおそらくシバルバーからの脱出どころか、最悪の事態にもなっていたかもしれない。それだけに、祐一は感謝の気持ちを込めて、美汐とかたく握手を交わした。

『相沢くん?』

「香里か?」

『よかった祐一さん。無事だったんですね……』

「その声は栞か。ああ、なんとかな」

『今から回収するわ。会合点の座標をVRのGPSに転送するから、そこまで来て』

「了解した」

『少しは骨がありそうなのだね、MARZの犬よ……』

 またしてもダイモンのハッキング攻撃だ。今度はシバルバーの外にある緩衝地帯で、どの勢力にも属していない地域であるため、直接的な攻撃を行ってきたのだ。

『我らダイモンは歓迎の意を表しよう!』

 姿無き敵の、嘲り笑うかのような哄笑が響き渡る。その途端にテムジンのヘッドアップディスプレイが異常をきたし、モニターは砂嵐となった。

「くそっ!」

 祐一は舌打ちするが、どうすることもできない。このままではVRの機能にも影響する深刻な事態になりかねない。さらに被害は機体だけでなくスライプナーにも及び、祐一は近接武器だけでの戦闘も余儀なくされていた。

『まだまだ、宴はこれからだ……。我がダイモンの招待状、受け取ってくれたまえ……』

 また、戦闘中祐一は従来のVRと違い、ダイモン・オーブという球体の戦闘体とも遭遇した。なんとなく祐一は、巧妙に罠に誘い込まれているような気がした。

『今回の客人は手ごわいお方だ……。我らダイモンの遊び心を捧げよう……』

 やがて祐一は敵の要塞のような場所へ辿り着いた。先ほどまでノイズの激しかったモニターが嘘のように元に戻る。祐一はこれがダイモンの罠であることはわかっていたが、香里の待つ会合点に到達するには、前面の敵勢力を粉砕する以外に打開策がないのも事実であった。

『取って置きのイベントだ、受け取りたまえ……』

 祐一は迎え撃つVRを撃ち倒し、要塞内の奥に設けられた砲台、ダイモン・ストゥーパを破壊して、ついに要塞の最深部に到達した。

『まさかここまで辿り着くとは……。貴様は、やりすぎた。限度を知らない事が人間の幼さの所以であり、我らダイモンにとって唾棄すべき醜悪な欠陥だ。その愚かさを今、思い知らせてやろう……』

 そこにいたのは、ダイモンが保有する攻撃型浮遊要塞、ダイモン・ワームであった。ワームの名が示すとおり、ダイモン・オーブを数珠繋ぎにしたような形態をしており、拡散レーザー、波状レーザーなど、並みのVRを軽く凌駕する攻撃を仕掛けてきた。

 さらに自在に空を飛び、迂闊に近づくと細長い機体を大回転させてくる。これではどうにも手が出せない。

 だが、ダイモン・ワームの攻撃は比較的単調で、ある一定のリズムで攻撃していることに祐一は気がついた。そこで祐一は、相手のリズムに合わせて攻撃を加えることにより、辛くも撃退できた。

 その瞬間、ダイモン・ワームよりまぶしい光が放たれた。

 悪意に満ちた哄笑を耳にしつつ、祐一の意識は闇に包まれた。

 

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